Novel
□Cradle
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「いおりくん…あたし…恐くてっ…一哉くんに見つかったら…この子がっ」
90%、一哉の子じゃないだろうからね…
今の一哉だったら、やりかねない。
高確率で堕胎を命じるだろう。
「だってっ、あたし…っあたしはっ」
彼女は、ソレが出来る人間じゃない。
血の繋がった、人間は彼女の姉一人だ。
大事なものが失われる喪失感と絶望感を彼女は身をもって知っている。
「…僕が…いるから」
僕が、守ってあげる。
総てから君を…いや、君たちを。
「愛してる。むぎ…愛してる」
むぎのしがみ付く力が強まったことがわかった。
「…結婚しよう」
そう言って、ずっと渡しそびれていた、プラチナのリングを薬指にはめた。
「依織くん…コレ…」
「本当は…君が、あの家を出て行った日に渡そうとしてうたんだ…ずいぶん遅くなってしまったね」
彼女は、ただ、静かに微笑んだ。
綺麗な、涙が頬を伝った。
君は僕の総てで…
ものとして譬えるなら太陽で…
それなら、僕は
彼女に安息を与え
彼女を包み込む
揺り籠になろうではないか。
と…。
続く
暗い。
暗い。
ごめん、一哉。
本当にごめん。
でも、一哉は止まりません。
止まれるワケがないのです。
彼も、むぎチャンを愛していますから…。
3月中旬庵原。