Novel
□Cradle
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ソレは彼女の上げた無音の悲鳴に聞こえた…
「…助け…て…」
しがみ付いてきた彼女は、すでに痩せていたのに、更に細くなっていた。
「あた…しっ…もう…」
「…大丈夫…僕が…ついてる」
声が震えてたのは
あれだけ求めた少女が
最終的には自分を選んでくれた気がしたから。
彼女が出て行った日、あの家は崩壊寸前になった。
壊れなかったのは、二年生の二人が、頑張って、ぎこちなく協力し合い、また、彼女が戻ってこられる環境を保っていようとしていたからだ。
一哉は当然のように、怒り狂い、泣きそうな顔をしていた。
一発殴られたけど、彼と同じく、生気を抜かれたようにしていた僕にそれ以上はなかった。
むぎの姿を、学園で見たときは
一瞬まぼろしだと思って…
ふいに涙が零れそうになり、会話をしていた人たちを切り抜け、彼女に走った。
彼女も、大きな瞳を揺らし、僕の強引な抱擁を受け入れてくれた。
助けて。と訴える彼女を、僕はチャペルに連れて行った。
罰を受けるべき僕が、こんな神聖な場所にいるというのは…なんだか可笑しい気がした。
むぎは、ただ、泣いていた。
そして、濡れた瞳で、僕の目をまっすぐ見てきた。
「…赤ちゃんが…できたの…」
ソレを言った途端、涙が止まらない彼女は、もう次の言葉を発することは出来なくなっていた。
「ん…いぉ…っ」
苦しそうな声を聞き、唇を放すと、驚いたような顔をしていた。
涙が、零れた。
彼女を無理やり抱いたあの時だろう…
ただ、嬉しくて
こんな男に人生をぶち壊された彼女に申し訳なくて…
壊れそうな身体を、強く抱きしめた