剣の街の異邦人Winリプレイ・キリリ編

□1・新パーティ編成
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あれはあれで、力を見せるパフォーマンスに違いない。
ヘルガさん本人が意図してもしなくてもね。
キョウさんの隊でも戦うと危ないという機械兵を沢山抱えている勢力が王宮騎士団。
その統括者であるマリリスさんに対しても、表面こそ穏やかでもその背景に対して背筋が冷たくなるものを感じる。
女性としては、お淑やかで上品で、優雅で…とああ在りたい、みたいな人なんだけど。
それが騎士と機械兵のボスなんですもの。

どちらにしても、異邦人を取り込んで更に異邦人しか手に入れられない純血晶を求める為。
表立たない水面下のつつきあい。
リウさんがそれに気づいているのかいないのか…。
それもまた分からないところだし、キョウさんとアンナさんの本当の考えだって私には分からない。
純血晶を誰に渡すかについては、仲間である人達にも話すべきではないことだろうから。
キョウさんはおそらくさり気なく、はぐらかしてくるだろうけどアンナさんには聞いただけで怒られそう。
考えていても、何も変わらない。
誰かを信じ過ぎるのもいけないし、誰も信用しない訳にも行かない。
それはどんな世界でも一緒なんだ。

改めて、私は目を閉じる。
この世界で心地良い事はごく限られてる。
ギルドの部屋でゆっくり休める時、食事と体を洗える時。
そして、自分の世界を一時暗闇に変えてくれるまぶたと、そこに焼き付いている光り輝く蝶々の群れ。
グロテスクな魔物との戦闘の中に迷宮で輝いている蝶々を見て、心が安らいだ気がする。
イギリスだったか…、ヨーロッパでは蝶々は死んだ人の魂だって言われている。
それを思い出して、本来なら悲しい事で、生きている私が本当は彼らに恨まれているのかもしれないのに、美しいと思って安らいでしまう。
あの群れの中に仲の良かった子が居るのかも知れないのに。
それでも、血で血を洗うような光景ばかり見ているとそちらの正体が何でも、目を奪われるのは人間の心理なんだろうか。
自分がゲームでやってきた方法が型にハマって嬉しいと思ったりする事も、殺生に変わりないのに喜ぶ自分が嫌になるけど、それを少し忘れられる。
ただ、思っている通り本当にあの蝶々の群れが魂だとしたら、リウさんが嫌がるのも、魂の消滅の話をした時の表情にも納得が行く。
それに、選ばれし者が三人に戻ったっていうアンナさんの言葉の意味も、リウさんが器だから三人の一人から抜けたのではなくて、誰かが死んで二人になったからかもしれない。
それは今無理に聞き出すような話ではないだろう。
何しろ、私が悪運強く今までの戦闘で一人の死者も出さなかっただけに過ぎない。
これからは敵も手強くなるんだから、今まで付き合ってもらった最初からのメンバーだけでなく、新しく私の隊の隊員になってくれる人を集めなきゃ。

その人達が戦えるようになるまで時間は掛かるけど、今持っている純血晶は一つ。
もう一つ手に入れたら次の神気スキルを得る事が出来るけれど、その時点で誰かに渡すべきなのか、そうでないのかも考えないといけない。
ああ、やっぱり考えてばっかりの生活じゃないの!
とにかく、そろそろ着替えをしておかないと、お掃除係の人にどやされてしまう。
今日も、頑張らないと。

昨日はメデル商会から帰還したあと、リウさんとキョウさん、アンナさんと私は改めて元居た場所に帰ることを願った。
そうして、次のミッションに向かうことになる。
血統種が居る場所は、ギルド北の雪と森の廟、王宮の下層区画の陰の王宮、貧民街の廃者の谷だ。
その前に、アンナさんから大魔石の説明を受けたんだ。
大魔石はいわゆる転送装置で、各迷宮にある小さなサイズの同様の石を触っておくと簡単にギルドと行ったり来たり出来るっていう便利な移動装置だ。
これを早く見つけ出すのが、探索の効率を良くするのに欠かせないだろう。
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