二次創作小説WIZ

□迷宮と別れ1
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その表情は複雑そうだったし、ジリアンと一緒の部屋で休むのは、と言い掛ける前にジリアン自身がダシルと一緒の方が良いと態度で示したのでザイラメルの言葉に従った。
彼女は行儀作法と修行の為に何年も家に戻っていない。
ダシルは両親の事などどうでも良かったが、ジリアンにとっては家族とは愛すべき存在である。
このところの状況に不安を感じるのと一緒に寂しさも感じ始めているのだろう。
そんな気持ちが自分と一緒で癒せるものではないと思いながらも、少しでも気が済むのならとダシルは出来るだけ彼女の隣に居るようにして来た。
戦いの時となればハートにも負けない剣術を見せるジリアンなのだが、こういった時の脆さには戸惑わされる。
シェリンが亡くなってからどれだけジリアンに励まされただろう。
それだけに、こんな時の彼女と一緒に居るのは辛い。
本当に必要なのは家族の姿、自分には何もしてやれないと分かるだけに。
部屋で彼女の気が済むまで肩を抱いていたが、ジリアンはダシルに謝るなり背を向けて横になってしまった。
そんな日々が続いた折、ジリアンの故郷であるリルガミンで冒険者を募っているという噂を聞く。
このところの魔物の活発化と関係が有るのかもしれない…。
ジリアンの里帰りも兼ねる形でダシルたちもリルガミンへ向かう事に決めた。
「それにしても、気になってたんだけどジリアンの姓ってアラカトルだったよな?」
ハートの問いにジリアンは頷く。
「ええ…。」
「親衛隊員の一人が、確かそんな名前だったと思って。」
親衛隊員という語句に思わずジリアンを見る。
「父は祖父からの地位を継いで…。
祖父はワードナと戦った冒険者だから…。」
王宮付きの賢者であったワードナはリルガミン王トレボーの宝であった“アミュレット”を盗み出し、城塞の地下へ迷宮を築き上げた。
この迷宮へと王は幾度となく兵を送ったが、迷宮の中にはワードナによって召喚された魔物が蔓延り、狭い通路で反対に行動を妨げられる形となった多くの兵士達が命を落とした。
これ以上自慢の精鋭を失う痛手を被りたくないこと、後への優れた人材確保のために冒険者へ目を付けたのだといわれる。
この時トレボーは周辺諸国にまで触書を出したのだ。
褒賞とリルガミンにおける地位、それが親衛隊員への抜擢。
ダシルたちが生まれるはるか以前の話で、異国のことでながら学院でも授業で取り上げられたので記憶には有る。
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