剣の街の異邦人Winリプレイ・キリリ編

□5・夕 エピローグ
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眩しい…。
空の青がこんなに綺麗だったんだ。
光が、暖かかったんだ!
私は一人立ち尽くす。
健二さんと恵理ちゃんの姿は見えないけど、おそらく飛ばされた時間が違うせいね。
ここは見慣れた東京の町並み。
そこに、エスカリオで手に入れた服のまま立ち尽くしていた私は、訝しげな目を向けられる。
それに戦いで殴られた身体があちこちギシギシ言ってる。
だけど、私は走る。
私の家に向かって!
町並みは変わらない。
明るい時間なら、お父さんとお母さんが居るはずだわ!
そして、なりふり構わず戻ってきた家。
玄関のドアをノックする。
呼び鈴を鳴らさなかった事に…覗き窓から見て足音の後、ドアを開けるのがおそるおそるに変わる。
…私が帰ってきたのを、幽霊か幻と思っているのかも。
「夕…?
夕なのね?」
お母さんが顔を出す。
私のお母さん、天那冬子。
「うん…。
帰ってきたわ…。
やっと、帰ってきたの…。」
何も言葉は要らない。
お母さんはひし、と私を抱きしめてくれる。
「どうしたんだ、ふゆ…。
……夕…なのか?」
訝しく思ったんだろう、お父さんが出てくる。
「ええ、帰ってきたのよ!
夕が、私達の子が!」
お母さんの声に、改めて姿を見せたお父さんに私は抱きつく。
「随分と疲れた顔をして…。
アザが有るじゃないか!」
その言葉で私達は家に引っ込む。
今しがた、アルムとマリリス両方にしたたかに殴られたばっかりですもの。
向こうではかすり傷程度だけど、エスカリオと東京では勝手が違うみたい。
エスカリオで仕立てた服を脱いで、お母さんが自分の目で見えないところを確かめてる。
「当分はおとなしくしてなさい。
お風呂温めるから、入って。」
「うん…。」
エスカリオでは、パーティリーダー。
異邦人の選ばれし者の一人、最後の選ばれし者の生き残りにして、魂の上では闇の眷属。
だけど、東京では親に心配をかける一人の子供。
これが私の本当の姿。
玄関のドアが激しく開く音がすると、聞き慣れた声がする。
「夕が帰ってきたって?!」
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