剣の街の異邦人Winリプレイ・キリリ編

□4・リプレイ3-リウ
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『三度目の墜落』
空中に放り出されること二度目、そして鉄の廟に転がること三度目。
世の中いい加減にして欲しいっていうものだけれど、今回辿る道は本当に終わりに繋がっているんだろうか。

=*=*=*=*=
ここは異邦人ギルド。
エスカリオの上空に出来た次元の裂け目を通った飛行機なんかの事故でエスカリオに放り出された人間が集っている場所だ。
エスカリオでは、俺達異世界から放り出された人間、ここでは異邦人の身体能力は非常に高い。
そしてこのエスカリオという狭い世界において、一部の異邦人は特別な存在になっている。
強い特別な魂を持っている人間、エスカリオの住民の脅威となっている不死身の存在、血統種と呼ばれる魔物から生命の源となっている純血晶を奪う力を持っている。
そんな異邦人を、彼らは選ばれし者と呼んでいる。
実際に、純血晶を取り出せること以外に選ばれし者自身に特別な何かが有るわけじゃないんだが。
本来なら、血統種を倒す事が出来るという以外で選ばれし者も含んだ俺たち異邦人は僅かに戦闘能力が高い人間でしかないといえるだろう。
しかし血統種を倒して、純血晶を手に入れたところで何らかの理由によって純血晶が壊れたらその努力も虚しいものとなる。
叩き壊す事も出来なくはないのかもしれないが、ほとんどの場合それの意味するところは、純血晶を手にした異邦人の”完全なる死”を意味する。
わざわざ完全なる、なんて言葉を付けるのは、この世界では死人を蘇生させる技術が存在していて、俺達十代の若い人間であれば二度までなら死んでも蘇生に耐えられる。
二十代以降になるとそれは一度になり、高齢者はその場で死んでしまうことになるんだが。
つまり年齢で魂の強度が違う。
限度の前であればとにかく生き返ることが出来る世界だ。
傷つけられ、限度を越えた俺たちの魂は光り輝く蝶々になって飛び去る。
この世界であちこち飛び回っている光る蝶々は、俺達の世界でも言い伝えにしている国があるように死者の魂というわけだ。
この蝶々にも色々ないわれもあるわけだが、いずれその事も明らかになる。
問題は、純血晶を手に入れた後にどうするか。
先にも述べた通り、選ばれし者は純血晶を手に入れる力を持っているがそれ以上は出来ない。
その、それ以上を行える人間が真の意味で特別な存在といえるだろう。
エスカリオには純血晶が持っている力を引き出せる人間が三人。
一人はこの世界で一番の権力者である、光の力の持ち主マリリス。
マリリスは王宮に属する光の神官であって、同時にその光の神である精霊神の力を継いだ存在だ。
王宮は騎士団という戦闘組織が有り、西洋風の人間の騎士は勿論、人間の倍の大きさはあろうかという甲冑兵という魔法の力で動く機械兵を率いている。
騎士の命令で動くそいつらは痛みも知らない破壊兵器。
穏やかな淑女然としているマリリスだが、そんなものを率いている戦闘組織の頭でもある。
そんなものに守られている王宮の市街は美しい場所だ。
それに対して、闇の力を司るのは、俺達の世界からの鉄くずやらなにやらを用いて街を築く貧民の街を牛耳るメデル商会の当主アルム。
鉄さびとゴムの匂いが漂うコンテナバラックのうらぶれた街を統括している商会の評判は芳しいものではない。
メデル家の手下はならず者として通っていて実際に貧民街はゴロツキだらけだ。
もちろん貧しさから日々の生活に喘ぐ人間の方が大多数を占めているのに違いないが、そんな場所の主であるのだから、商会の当主が13歳の小僧でも普通の人間でないことは闇の神の力があろうとなかろうと明白ではないだろうか。
そして、最後の一人は俺たち異邦人の中に居る。
中立を司るドラゴンの力の持ち主、月貞理羽。
…リウだが、16歳の女子高校生だ。
こんなファンタジー世界真っ只中に放り出されていて、異世界の摂理なんてものを最初はハッキリ自覚しているわけじゃない。
だが、純血晶の力を引き出す特別な力を持つ存在であることは他の二人と何ら変わりはない。
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