剣の街の異邦人Winリプレイ・キリリ編

□1・新パーティ編成
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「だるい…。」
私は思わず吐き捨てる。
世間を騒がせていた飛行機の行方不明事件の渦中に巻き込まれて、RPGそのものの世界にやってきて。
自分がその世界の勢い、未来に関わりがある主役格とか…。
魂が特別で、何度殺されても死なないとか。
その世界の要になる人たちとか…。

件の飛行機事故に巻き込まれなければ、今頃は家に戻っていつも通り学校に行っていたんだ。
高校受験の事で悩みつつ、勉強が進んでいるとかいないとか、そんな話をしながら。
小生意気な年下の幼なじみに小突かれるいつも通りの生活。
それが今は目の前から全てが消えて、目の前に有るのは洋風で、あり得ない広さの異邦人ギルドの居住区の部屋。
勿論、極端に広いっていうことじゃないけど、私が住んでいた家なら二部屋丸々使っている位で。
その部屋に設置してあるベッドに寝転がってる。
ベッドもやっぱり二人分位有るし。
そんな豪勢な生活の見返りは、この望みもしないまま放り出された、剣の街エスカリオの脅威となる血統種という魔物を倒せるのが私達のような、異世界の人間、その中の更に一握りの純血晶を扱える人間だからだ。
私は、天那《あまな》 夕《ゆう》。
中学校三年生。
…だけど今はただ、ユウっていう名前だけで通っているし、選ばれし者なんていう大層な肩書がくっついている。
選ばれし者でなくとも、この剣の街に放り出された人はある程度は魔物と戦うべくギルドで生活してる。
元の世界に戻るために。
それに必要になるのが、この世界に存在する三つの神の力を強め、世界の均衡を保つと同時に歪みを正すこと。
世界の歪みを正すことに必要になるのが純血晶と、純血晶を受け取る器を持つ者。
神の力を代理している存在の力。
私達異邦人のリーダーである月貞理羽さんも、その器を持つ者の一人で、当然彼女の場合は私達異邦人のリーダーとして故郷に帰る事を目的にしてる。
でも他の二人、この世界の実権を握る勢力である王宮と王宮騎士団の統括者、光の神の神官マリリス。
もう一人、貧民街の統括者のアルム・メデル。
見たところ私と同じくらいか、年下かというくらいの男の子だけど当主様だ。
彼女と彼の望むところは、たぶん自分の権勢の確立。
特にアルムの言動からはそれが窺える部分を感じるから、私が勝手にそう思っているだけなんだけど。
貧民街と呼ばれるだけに、そこの生活が荒んだものなのだろうとハッキリ足を踏み入れていなくても肌で感じ取れるし。
結局差別、偏見が様々な種族があれ、人が生活を営んでいる場所には存在しているということだ。
理想の世界を手に入れるために、器を持つ者は純血晶を求めている…。
純血晶を誰に渡すかは、選ばれし者個人の意志に委ねられているのを、私に世界の概念を理解させる為にリウさんが最初に手に入れた純血晶を受け入れた為に少しばかり騒がれたりしたんだ。
特に商会の人が。
色々な意味で、王宮の人も、商会の人もインパクトが有ったけど…。

新入りの異邦人の私に対して派手なパフォーマンスでアプローチした分商会の人間の印象が強いっていうだけ。
パフォーマンスそのものも、推測でしかないけど、そうとしか思えない状況だったから。
病身の当主様自ら操縦した人間搭載型機械兵と大型怪物のガチバトルはまだ目に焼き付いてる。
どちらかと言えば、そのラドヒドラっていう、血統種の方はグロ過ぎて思い出したくないけどね。
で、待ち合わせ場所に戦闘が終わってからわざとらしく出てきたレイネーリアさんことレインさん。
二人を例えるなら、悪い意味でキツネとイタチかな。
話している分には面白いかもしれないけど…。
アンナさんが、リウさんを脳筋女って言うけど、あの当主様の場合は脳の構造は機械いじりとやっぱり筋肉だと思う…。
男の子っていうのを加味してもね。
そして、王宮ではガチガチな思考回路のマリリスさん付きの女性騎士ヘルガさんが居る。
あちらは佇まいこそ静かだったけれど、人間の倍の背丈の機械兵は見る者を萎縮させるのに十分過ぎる迫力が有った。
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