剣の街の異邦人Win体験版リプレイ・キリリ編

□4・これからに向けて
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少なくとも、王宮の人も、商会の人も悪人とは思わないけど何も思うところが無いとは言わない。
器同士は目立って諍(いさか)いをしていないけど、純血晶で世界が変化するのなら、王宮と商会は純血晶を一つでも多く集めるために異邦人の懐柔に乗り出そうとするか。
それとも機械兵の力を付けて…。
私は後から浮かんだ考えに一瞬身震いしながら、貧民街を出るあの変種ヒドラと戦った道を戻ってきていた。
とにかく初めての貧民街はどうにか生きて帰れそうだ。

そこでアンナさんに頼まれて調査に来ていたっていうキョウさんと対面した。
血統種は異邦人ギルドの周囲だけに出るんじゃないですものね。
当主様、アルムに対する印象を尋ねられたけど私は率直に分からないと首を横に振った。
荒れた場所を統治するボスの考えがすぐに分かるほど私のオツムは良く出来てない。
同じ年頃だとしても…病気してるなら体が小さいだけで思ったより上かもしれないけど、ただの中学生と、一勢力を束ねるボスの思考回路が一緒の訳がない。
キョウさんが言うとおり様々な噂が飛び交っているのはあの手の生活状況なら想像はつく。

少し考えれば、彼らの登場は不自然だった。
戦闘が終わるなり姿を見せたレインさん。
呼吸機無しで歩けない体で新型機械兵の性能をごつい怪物相手に試していた当主様。
主従揃って私を試していたとも取れる。
そもそも、異邦人の力を借りなくともって言ってた気がしたし…。
この場所に、地区を支配するだけの力を持っていればあんな怪物でも囲っておけるかもしれないんだもの。
彼らが純血晶を手に入れる事が出来ないから、予め捕らえていた血統種の魔物をけしかけたっておかしくはない。
仕方無いと言えば仕方ないんだけど…。
機械兵の性能を尋ねてきた当主様を遮ったレインさんの行動は却って私の疑念を深めた。
この場所にもっと大物を仕込んでいることさえ考えられる。
それでなくとも、こんな空気の場所に呼吸機無しで動けない体の人間が居る自体良くないでしょうに、呼吸機無しで動く以上の無茶をしていた当主様。
あのマスクが本物かさえも分からない事になってしまう。
こんな”お膳立て”を何度も繰り返されるなら、文句無しに信用出来ないって答えられるんだけど、一度位は飲み込まなければいけないんだろう。
むしろ、ビジネスっていうのはこういうことかもしれない。
面倒な倒すべき相手を予め用意しておいたんだから、感謝しろ…か。
彼が本当に重い病気の人間であったなら、機械兵に乗るはずの人間は本当は違った…むしろギリウスさんの話を考えれば搭乗している必要も無かったかもしれないのに、彼は乗っていた。
それがレインさんの誤算だった可能性は有るんだけど、大事な器を持つ者を囮にするのは普通はあり得ない。
リウさんが血統種相手でも平気だったように、レインさん一人でもあの程度は倒せる事は当然考えられるとして。
…そうであるならやっぱり、女狐とショタイタチなのかしら。
マスクが病気を装う文字通りの仮面なら、やっぱり大したお膳立てとしか言いようがない。
せめて当主様が本当の命がけかそうでないかぐらいは知りたいんだけど、仮に尋ねる機会を得たとしても商会の主は質問に対する見返りを求めるだろう。
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