二次創作小説WIZ

□迷宮と別れ2
1ページ/25ページ

数日後、伝言を書いた酒場に行くとマスターがハートの顔を見るなり言った。
「客が来たぜ。」
言葉を理解し、喜ぶハートだが、マスターの表情は何やら複雑そうであり、自分たちを知る冒険者達の表情も複雑そうだった。
マスターが顎で示した先のテーブルに座っている後姿に全員が息をのむ。
そのあまりに小さな後姿に誰もがギョッとした。
ホビットならば確かにその体格でもおかしくはないが、あの長く突き出た耳はエルフのもの。
しかしながら伝言を見て名乗りを挙げてくれた以上無視する事も出来ない。
恐る恐るハートが声を掛けると小さな背中が振り向いた。
「おぉ、もしやあなたがゲルハルト・ヘッセン殿ですか?!」
振り返ったその顔はやはりエルフのようだ。
日の光を溶かしたようなプラチナブロンド、瞳は紫で非常に整った端正な…童顔。
椅子から飛び降りて立った背丈はハートの腰と同じくらい。
まさに子供並である。
体型相応幾分高い声だが、声変わりはしているようだ。
れっきとした成人男性であるらしい。
最も驚いているのはエルフ族の女性であるザイラメルだ。
驚いた様子でこちらが見つめているのを慣れた様子で小さなエルフは名乗った。
「まぁ、このような視線には慣れていますので…。
わたくし、クレイグ・アドリアンと申します。
仇名はミニマム、見たままですな。」
おまけに小柄な体に似合わない口調である。
その差し出された小さな手を取ってよろしく、とハートは握手した。
「ミニマムって言うかミニマメっていうか…。」
キリーの感想にダシルも同意を示さざるを得ない。
「どうしたんです、皆さんがテーブルについて下さらないと、わたくしをパーティーに加えていただけるのかどうかという、相談が出来ないではありませんか。」
原因のクレイグに促され、五人はどうにかテーブルに座った。
パーティーを周囲の冒険者達も注目している。
「あのような視線にはもう慣れました。
七歳で成長が止まりましてじき二十年…、長いのか短いのか良く分かりませんが。」
「それで、ビショップとしての経験はどれ位ですか?」
ハートは気を取りなおしてクレイグに切り出した。
「はい、わたくし、一度魔術師を経験しましてそこから転職致しましたので…以前ご一緒していた方がどれ位の技術をお持ちか判りませんが、魔術師の呪文は全て、そして僧侶の呪文も四段階まで習得しておりますぞ。」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ