NOVEL

□恋愛には危険が付きもんだ〜血塗られた紅い糸〜
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 渡さない。

 離さない。

 譲らない。 



 愛してる。
 好きだ。
 大好きだ。
 誰にもこの感情は負けない。
 例え、邪魔が入れば排除すればいいのさ。



 そう……。



 現世から「さよなら」だ。

 その意味……分かるよな?
 だから、逃がさない。
 死ぬまで一緒だ。
 生涯を共に生きよう。








 俺達は「紅い糸」で結ばれてる。
 だろ?









 数年前に彼等は江戸の下町に移り住んだ。
 伽藍洞となった屋敷は廃屋認定を受けたが、今でも住める状態だ。
 設備も、環境も整われ、実に捨てられた処とは思えない。
 そして、位置的に説明すると――人里を離れている。
 全く誰も来ない。
 林道は次第に草木が生え、獣道になりつつある。
 それでも、毎日欠かさず俺はそこに足を運ばせる。
 刻(じかん)指定は決まっている。
 深夜である。
 危険かもしれないが、それを承知のうえにて通い続けている。
 ところで、ここで疑問に思う事があるだろ?
 何故、俺が屋敷を訪れてるかだ。
 説明してもいいが、正直に面倒だから敢えて今は言わない。
 到着し、目的の処に行けば話すよ。
 それまで……辛抱してくれ。
 お願いだ。
 灯りを頼りにして周りでは虫の音が聞こえてくる。
 余り、足音は響かせない。
 何時(なんどき)に猛獣に遭遇するか定かではないからだ。
 俺だって一応は用心している。
 死んでは「彼奴」に会えないからな。
 次は来世で――と、思えば酷く衝撃を与える。
 俺は現世が良いのだ。
 彼奴が生き続ける限り、独りにはさせない。
 させたくはない。
 悲しませるだけだから……。
 そして、屋敷の敷地内に辿り着く。
 ここまでの道のりだと凡そ、十分は経過すると思えるな。
 実は幾分経ったかは計った事はない。
 今の刻は多分の話だと思ってくれ。
 まぁ、さておき。
 屋敷内で彼奴がお待ちかねだ。
 退屈だろうな。
 俺はそう思えた。
 でも、俺が来た事で退屈はさせない。
 逆に楽しませる。
 互いの意識が重なり、一つとなるのだ。
 彼奴が恐怖に駆られれば俺が消してみせる。
 それほどまでに、大切にして大事。
 生涯において傍に置きたい。
 あと、彼奴は寂しがり屋でもある。
 早く行かなければ。
 悲観状態に陥る可能性は大だ。
 俺はそそくさと屋敷内に入り、奥に進む。
 誰一人も居ない内部は物静かだ。
 静寂に包まれている。
 それは気にせずにして――ある処に来た。
 奥の行き止まりの広い廊下。
 ここになにがあるのか、と思えば!
「よいしょ」
 声を微かに響きつつも、目の前の絡繰りを暴く。
 廊下が正方形に開いたのだ。
 これには簡単である。
 誰も気付ける事はできるかは分からない。
 でも、俺には瞬時に認識できた。
 彼奴のために下見に来たとき、足元に取っ手のようなものが見えた。

 それを両手で掴む。
 引けば、地下に繋がる出入り口が完成した。
 面白い。
 こんな絡繰り……余り見かけた事がない。
 地下には探索したところ、座敷牢は幾つかあった。
 ここなら、喜んでもらえるだろう。
 真実を知ってしまった以上、利用価値はありそうだ。
 さて、前に「何故、屋敷に来ているのか?」と云う質問の説明に入ろうかな。
 彼奴が座敷牢で生活を送り続けてるからさ。
 俺はその親代わりのようなもの。
 最愛の我が子を守るのは当たり前だろ?
 そんな感じで彼奴とは関わって接している。
 こんなもんか。
 でわでわ、地下に進もう。
 螺旋状の階段が暫し続く。
 老朽化はされておらず、木製の階段は傷んではいないし、腐りもしていない。
 真新しさがある。
 落ちる心配は以前ながら思わない。
 そして、座敷牢が並ぶ一番下に来た。
 何処からか水滴が落ちる音が聞こえる。
 寒さも覚える。
 しかしだな。
 彼奴は寒さは関係ないか。
 あははははは――って、笑ってみる。
 灯りをランタンに変え、通路を歩く。
 靴音は響き渡り、静寂を一瞬ずつ消す。
 座敷牢は薄暗い。
 また、骨が散乱している。
 地下でなにが起きたのか。
 真相は未だに謎に包まれている。
 でも、一欠けら分かる。
 どの死体でも獣のようなものを連想させる。
 人の形にして獣の形……摩訶不思議だ。
 けれど、毎度に思うのだが子供の声が聞こえてくる。
 ざわついた数人の子供だ。
 本当になにがあったか……まさか、骨は子供なのか……たまに怖さがあるが、負けずに彼奴の前に訪れた。
 木製での柵を境に俺達は対面する。
 座敷牢に居る彼奴は両手首足首に枷を付けられ、鎖で繋がれている。
 服装は黒の着物を纏うが汚らしい。
 ぼろぼろ――と、云った方が正しいか。
 彼奴は顔を俯かせている。
 俯き加減での座り方をしている。
 背骨を丸くして……。
「よ、大将」俺は微笑を浮かべて声をかける。
「んだよ……この監禁魔が!」大声で彼奴は言い放つ。
「そんなこと言うなよ? そそられるだろ?」
 実に可愛い男だ。
 座敷牢に今でも入りたい感情に揺さぶられるではないか!
「うるせぇんだよ――ここから出せ」反論に俺は息を漏らして、落ち着いた様子を見せる。
「まぁ、急かすんじゃねぇよ、あの鬼の副長尾殿が恥じるね」と、正体を半ば明かした。
 紹介しよう。
 彼だ。
 真選組副長、通称・鬼の副長こと土方十四郎なのである。
 俺の恋人さ。
 相手はどう思ってるかは察しはつくだろうけどな?
「……御託はどうでもいい。早くこ――」
「出させねぇさね」
 土方が云う途中で俺は遮断した。
 否定的に答える。
「また、独占欲の蛆が頭の中にでも湧いたか?」それに関して不敵な笑みをする土方。
「ちげぇよ」俺は低音の声に、またもや否定した。
 それから、話は続けられる。
「お前はもう、外部には出られない。まぁ、俺はお前さんの事が死ぬほど大好きで、今からでも犯そうかと思ったんだけど……現実から逃げるな」

 悟るようにして正論をぶつけてみる。
 理解してくれると助かるけどね。
「外部に出れない? 理由を聞かせろ」
 ほら、来た。
 説明要望。
 隠すつもりはないから、事実を棒読みで答える「お前さんは人狼だ。既に獣化しているんだよ。気付け、阿保」
「人狼? ……獣?」驚く土方。
 どうやら、己の状況を理解できてないみたいだ。
 困った、困った、困ったなぁ。
 大事にな事なので三回言いました。
 すみません。
 てか、俺が謝るわけねぇだろうよ?
 なにしてんだか。
 内心の状態わよ……。
 しかし、理解させるために扉の鍵を開け、座敷牢内に入る。
 無意識だろうか。
 土方は怯える小動物の如く後ろに下がる。
 身体が震えている様子がよく伺える。
 今回はなにもしない――わけにはいかない。
 大好きの人の前にして勃起しそうになる。
 けれど、まずは獣に関しての解釈を始めるとしようか。
 要はしつこいようだが、説明だ。
「ここに鏡はねぇけど、頭を触れろ。とくにこめかみにだぜ?」
 一旦、指示を出す。
 土方は言う通りにこめかみを手で触れる。
 確かに獣のような耳がある。
「ひぃ!」と、悲鳴を上げては驚いているみたいだ。
 それでいて、尻尾まで指摘したところ、こちらも驚いでいる様子だ。
 何故(なにゆえ)、人間ではなく獣化したのか……本人も混乱してて冷静を保てないでいるようだ。
 俺は獣を犯すのは初めてだが、新感覚で楽しめそうだ。
 動揺している隙を見計らい土方を押し倒す。
 仰向けにだ。
 上の位置に居る俺に反応する。
 頬を紅潮させる。
 この後になにかされるかは認識してあるみたいでやや抵抗を示す「この事態で押し倒すのは無理があるだろ、銀時!」
「別に……獣プレイしたら気持ちいいんだろうと思ってな」
 とりあえずは着物を脱がせる。
 土方を抱くのは五回目だ。
 当初は必死に抵抗を見せたが、今は諦めようとしている。
 クスクスと笑ってしまう。
 じゃあ、頂きますか。
 俺は抵抗をできないようにして、接吻をした。
 片手で身体に触れた。
 乳房は固くなっている。
 感じてるのか?
 全くすぐに感じちゃうんだから。
 そこが性欲が膨張するんだよね……。
 土方、愛してるよ。




 ※ ※ ※ ※


「はぁ、はぁ、んんっ、んぁぁぁ……やめっ、あっあっあああん……んぅぅぅ……うぅぅっっ!!」
 座敷牢に土方の喘ぎ声が響く。
 俺は己の陰茎を肛門にて出し入れしながら、土方の陰茎も片手で激しく擦る。
 先端から精液がだらだら、と流れる。
 床が白濁液で染まる。
 精液独特の匂いが周囲に漂わせる。
 肛門は精液で満たされている。
 溢れかえるほどである。
 何度、射精した事か。
 びくんびくん、と土方の身体が跳ねる。
 その繰り返しだ。
 
 絶頂を何度も繰り返しを行うと体力が消耗してしまう。
 そろそろ、終わりにするか。
 六回目の射精で終了だ。
 俺は腰を振る速度を速める。
「いや、いやぁぁぁ……激し、くて……んふぅぅ……おま、え……ひゃぁぁ、かく、ご……しと、け……んんんっんっ! はぁぁぁぁ」
 土方の限界を察知した俺は出し入れを更に速度をあげ、内部に射精する。
 どぴゅ、ぴゅ、どぴゅるるるるっ!
「はぁ、熱い……銀時のが……んぅぅぅ……精液、しすぎだぞ……俺を怒らせたいのか?」
 荒息交じりに俺に怒りを飛ばす。
「なんで、怒られなきゃいけねぇんだよ?」惚けたように云う。
 今までも、土方は最後に怒り出す。
 慣れているから気にしない、気にしない。
 ここ重要!
 覚えた方が……覚えなくてもいいからね。
 行為を終えた俺はジッパーを閉める。
 陰茎を収める。
 尻尾をふりふりしながら、漸く落ち着きを取り戻した土方は不満があるような――態度をする。
「俺とするの、いい加減……慣れてくれない? 銀さん、泣きますよ?」
 今にも泣きそう――な、ふりを見せる。
 
「五月蝿い。俺は怒ってねぇ!」
「そういうふうに見えるけどねぇ?」
「なら、勝手にしとけ」
 着物を纏う土方に俺は抱き付く。
 耳元で囁いた「お前を死ぬほど好きだから。邪魔者は消す……俺のものだけに……土方も好きでいて?」
「…………」
 土方は黙る。
 そこで感じたのだろう。
 俺から漂う気配を。
 殺気を。
 なんせ、そうしなければ土方は思うようにいかない。
 洗脳されるべきだ。
 俺のものになれ。
 そして、俺だけを見ていてくれ。
 あは。
 ああははははははははははははははははははははははははっ!!
 ひゃはははははははははははははっっ!!
 内心で狂気沙汰の笑い声を発する。
 もしかすれば、もしかすればだ。
 土方は俺を手放さなくなるだろう。
 勝者は決まりだな。
 それで、行為は終わったとしてである。
 獣の耳と尻尾が生えるのは――もしかすると、あの死体のようになるのか?
 行く途中で死体を見てきたがどれも、獣の耳と尻尾の痕跡がある。
 つまり、土方はなにか発病を引き起こしているかもしれない。
 考えさせられる。
 因みに土方の耳と尻尾は白だ。
 ここも重要!
 さて、解決する方法はないものか……。
 結論に辿り着けない。
 それだと死ぬまでこの姿のままだ。
 できたら人に戻ってほしい。
 そうなると今を変貌させないと。
 俺は随分と考えに耽る。
 解決に至るまでここから離れない。
 そんなおりに――。
「お前も来てたのか、坂田銀時さんよぉ?」
 近くで声が聞こえた事に気付き、我に返る。
 声のした方に振り返る。
 そこには、蝶の絵柄がある紫の着物を纏う。
 片目は包帯で隠れてある。
 声主からは異常なまでの殺気を感じる。
 俺は土方の前に立ちはだかる。
 警戒をする。
「久しぶりじゃねぇか? 高杉」
 そうなのだ。
 訪れたのは高杉晋助だった。
 俺とは犬猿の仲だ。
「おうよ、お前さんがいるのは意外だぜ? なに? 「俺の嫁」を横恋慕するとはしねぇよな?」
 腰に身に着けている刀を手にして、攻撃態勢に入ろうとする。
 今にも鞘から引き抜きそうだ。

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