NOVEL

□闇の沼に嵌まれば、戻れない
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 元は朱雀の化身とも呼ばれていたか。
 晴明が付けた名だ。
 思い出すなりて懐かしむ。
 だが、桂に止められるほど……意思は弱くない。
 言霊を残して晴明は神社を後にした。
 桂は彼の後ろ姿を見るなり、崩れるかの如く座り込んでしまった。
 また……京都で繰り広げられる。
「例の魑魅魍魎」との戦いが……。
 記録されたのは、晴明を中心に玄武、朱雀、青龍、白虎の化身が京都の上空から出現する魑魅魍魎と対峙した大昔のものだ。
 天地は割れ、必死に帝を含めて民達を守護してきたが、犠牲は数多。
 被害規模が大きく復興に至るまでは長き歳月を経た。
 魑魅魍魎を倒して数日後――晴明は姿を眩ました。
 とある情報では記憶が完全に失われた事によるもので、新たな人生を開始しての事だ。
 だが、それは的中する。
 晴明は記憶を捧げて輪廻転生し、攘夷志士の姿に変貌を遂げた。
 桂、高杉は記憶を維持できているためすぐに、彼が晴明だとは把握できた。
 懐かしき再会……とは云えず、記憶が失われた晴明は晴明ではない。
 だがしかし、神社から姿が見えなくなる彼は、紛れもなく安倍晴明。
 主君であるが桂の朱雀刀零式(すざくとうぜろしき)は持っていかれてしまった。
 もう、戦うな――と、云うのか。
 面白い。
 桂も社を後にする。
 晴明を追って京都に向かう準備をする。
 今回の戦場は決まったも同然だ。




「ああ、了解した。消えていいぞ」
 高杉にも、俺にも、彼等が現われた。
 大昔の記録と晴明復活の情報が届けられる。
 後に彼等も燃えて消えた。
「この記憶は……?」俺は知らない。京都での大災害はなんだ?
「記録の通りだ。俺達は守護は晴明を主として……魑魅魍魎を対峙した。だがな、その龍刀零式は誰にも適合者はなくて……神殿に封じられていた。けど、漸くお似合いの主様が現われた。真選組解体後――京都に来てくれ。例のバケモンが出るらしいからな」
 高杉は「先に京都に行く」と、云う。
 正直、俺も京都に向かいたいが真選組の件がある。
 それを片付ければ……。
 よし。
 早々に動くぞ。
 俺は高杉に別れの挨拶をするなり、行動を開始する。
そこで神威が気楽で面白く話し掛けてきた。
「真選組打倒するねは、君一人で無理だ」
それはそうだろ。
てか、高杉に云われたろ?
組めって。
覚えてねぇのかよ?
「あ、ごめんごめん。忘れてたよ。えーと、ひじ(点)ひじか(点)ひじ(点)まぁいいか!名前なんて」
てへ。
覚えてないや。
どうでもいいけど?
と、云わんばかりの態度をする神威に苛立つのは何故だろう。
俺だけか?
てか、てめぇ!
俺は神威の目の前に立ち、(むらぐら)を掴んだ「名前くらい覚えとけ。俺は、ひじか(点)」
「あ、思い出したよ。土方歳三だ」
どうして、間違えた名前を云うかな!?
俺には理解でないんだけど?
歳三じゃなくて十四郎だ。
完璧に違う名前じゃねぇか。
「ああ、ごめんね」
軽い謝罪。
本当に覚えたんだろな?
一応、確かめる「俺の名前は?」
「うーん」
神威が考え込む。
考え込む事ではないですけど?
「ひじか(点)」
ひじか?
「土方」
土方?
そこまでは合っている。
「(点)土方歳三だ!」
最終的に脱線した名前かい!?
呆れる俺は溜息を吐いた。
もう、こいつとは話したくねぇ。
嫌気が差す。

「名前の件は冗談だよ。気にしなくていいから」
非常に気になりますが?
一発殴っても良い?
腹立ち過ぎて我を忘れそうになる。
ま、それはそれで置いといて、神威はさっきの気楽な態度ではなく緊迫感のある雰囲気を漂わせる。
本題に入る「さてと、真選組を全滅する事だけど、俺の部下を使うといいよ!そうすれば、片付け作業は簡単に終わる」
宇宙海賊春雨の第七師団を使えと?
こりゃあ、壮大な祭りになるな。
気持ちが高まる。
「じゃあ、頼むわ。えーと」
「神威でいいから、歳三」
「いや、たがらさ(点)名前が違うから」
「うん、分かってて言った」




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