NOVEL

□闇の沼に嵌まれば、戻れない
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「俺はお前を好きになっちまった……闇の世界で生きねぇか?」








 恋愛は面倒くさいものだ。
 一人で居たいのに、常に一緒だとか。
 勝手に話しかけたりして。
 自由時間はないんですか?
 コノヤロー。
 溜息を漏らす俺は真選組の副長を努める土方十四郎である。
 以後お見知りおきを。
 隊員達からは「鬼の副長」だと名称されたりしている。
 鬼か……なかなか、お気に入りの言葉だ。
 局長もそれで通じている。
 けどな、通じねぇ輩が居るんだわ。
 普通に巡回中の話だ。
 お茶屋で彼奴に接触した。
 偶然だな、と思いきや……相手は必然だと云ってくる。
「真選組で鬼と呼ばれるアンタが団子とは……それも、巡回中に。ククク、面白いじゃねぇか?」
 居合わせたのは指名手配中の元攘夷志士・高杉晋助だった。
 こいつは隠れもせずに江戸で暮らしている。
 だが、こいつは表沙汰には居ない。
 闇側に身を潜め、幾つもの事件を勃発している超悪党だ。
 俺が巡回中なのが災いだな。
 捕まえてやるぜ?
 団子を喰い終わった次の瞬間だ。
 刀に手をかける。
「これはこれは、恐ろしき鬼だ。見事に役目をしてらぁ……でもよ?」高杉は不敵な笑みをする。
「なにか、企んでいるな? 高杉」刀を鞘から引き抜く。
 交戦が勃発しそうだ。
 高杉も腰の刀を引き抜いたからな。
 どちらが強いか思い知らせてやるぜ?
 本来は公共の場で刀を交えるのは局長の近藤さんに云われてるけど、縛り付ける機会だ。
 逃したら、会う事は当分なさそうだしな?
 お手並み拝見だ……と、思いきや相手の高杉は予想不可能な爆弾発言を云ってきた「アンタ……好きだわ」
「はぁぁぁ!?」
 俺は唖然とする。
 なんでこんなときに云えるんだよ?
 頭がおかしくなったのか?
 おいおい。
「ふざけたこと言ってんじゃねぇ! 潰すぞ?」
「それもありかもな?」
「っ」
 刀を突き付けてる状態に緊迫感ねぇな。
 からかってるのか?
 高杉、てめぇは俺をからかってんのか?
「冗談にもほどほどしろよ? てめぇを生かしておけなくなった」これを云うと高杉は考え込む様子を見せる。
 数秒後、ハッとする表情をする。
「そうか、なるほどな。お前は俺を好きなんだろ?」
「はい?」
「え、違うのか?」
…………。
………。
……。
…。
 違いますけど?
 どういう妄想をしてるんだよ。
 厭きれてなにも云えねぇじゃんか。
 マジでうぜぇ……。
「なぁ、鬼の土方さんよ」
「なんだ? また、変なこと言ったら斬るぞ?」
「…………」
 黙る高杉。
 後にこう告げてきた「告白してんだ。返事はまだか?」
「はい、斬り刻むの決定」
 告白を受けてる己が恥じる。
 もう、知らん。
 こいつを牢獄にぶち込んでやる。
 俺は行動を開始した。
 刀を振るう。
 高杉は面白く楽しく回避する。
 雰囲気で馬鹿にされているように思えてならない。
 本当に倒してやる!
「覚悟しろ! 高杉晋助!!」
 素早しく行動をする。
 隙を与えず、高杉に二度目で斬ろうとする。
 だがしかしである。
 それも回避されていき……真面目に口を動かす「早く返答しろよ、待つのは嫌いだ」
「うるせぇ! 黙って死ね! もしくは牢獄行きだぜ!」
 勝負は俺が優勢だ。
 このまま、負かしてやる。
 未だに避け続ける高杉に口元が緩む。
 空気が変わった。

 高杉から殺気が帯びる。
 俺は漸く戦う意欲を見せたかと、張り切る。
 久しぶりの強者(つわもの)だ。
 元攘夷志士である高杉の剣術は如何なるものなのか……確かめたい!!
「返事がねぇなら……無理に聞かせてやるかな?」
 え?
 まだ、諦めてない!?
 殺気があるよな!?
 殺すつもりだよな!?
 なんでこうなるんだ!?
 馬鹿げてる。
 実に阿保らしい。
 正直、目の前のこいつは脳内の程度が低いのか?
 思わず疑ってしまう。
 あーあ。
 馬鹿に出くわしたもんだぜ。
 ここは交戦回避で決めるしかないだろうな。 
 状況に嫌気がさした。
 俺は戦闘意欲を捨て刀を鞘に納める。
「あれ? 殺されたいのか? 最愛なる俺様に」
「誰が最愛なるだぁぁ? ざけんな、俺はてめぇなんぞの恋人になったことは一度も――っ!?」
 言葉を云う途中で気付かずに、高杉が目の前に来ていた。
「あっ!?」失態だ。俺は油断した。
 これだと殺される。
 両目を自然に閉じてしまった。
 すると、唇に温かい感触を受けた。
 閉じてたのを開く。
 まさか! まさかとは思えねぇが!!
「正直になれよ? なぁ、接吻は恋人の証なんだぜ?」高杉に唇を重ねられた。
 俺は両目を大きく開いた。
 そのまま、押し倒される。
 勿論の事で抵抗をする。
 ここは外だ。
 誰かに目撃される可能性は非常に高い。
「お、おい……ここじゃあ……」
「大丈夫だ。外敵は全て殺したからな」
「殺し――ッ!?」
 確かに。
 普段は賑わう茶屋は物静かだ。
 誰も居ないように感じられる。
 本当に無関係者は殺されたのだろうか。
 否。
 安否は分かる。
 この高杉の性格だ。
 殺しなんぞ……平然とする。
 俺は警戒をする。
 手に握る刀は押し倒れた際に離れた。
 殺す事はできない。
 困った。
 高杉に犯される。
 助けてくれ。
 誰か……誰か……誰か……。
 危機的になったときに脳裏にある人物が浮上する。
 山崎だ。
 山崎退である。
 密偵にしては優秀な隊員だ。
 俺は悲鳴の如く彼を呼んだ。
 だが、高杉より驚愕するほどの事実を告げられる「あー、あの気弱な密偵は殺してもらったぜ?」
「え……なにを……」
 信じるものか。
 山崎が殺さるなんて……。
「大丈夫だ。ちゃんと」高杉は企みある態度で云い続ける。
「斬首したからよぉ?」
 な、なにを云って……斬首はありえない。
 すぐ危うい状況に於いて素早く行動をする弱い奴だ。
 首を斬られるのは……。
「おい、万斉。例のモンを持ってきな? 隠れるのはよそーぜ?」
「傍観者のつもりで隠れていたでござるが、居場所を明かされたとは、さすがは晋助でござるよ」
 近くの木々からヘッドホンとサングラスを身に着ける男が登場した。
 俺はこいつを知っている。
 高杉の仲間だ。
 名前は……河上万斉。
 敵視している人物でもある。
 常に三味線を持ち歩いている話は聞いた事がある。
「あの山崎なんとかには――苦労したでござるよ……ほら、土方十四郎。これをくれてやるでござる」
 万斉が何かを目の前に転がした。
 それに両目を疑った。
 山崎の生首がそこにはあった。
「山崎……山崎……やま……」
 酷く衝撃を受ける。
 大事な隊員を失った。
 放心状態になる。
 瞳孔に光を喪失する。
 何故、殺されたのか。
 思えば思うほど、悲観的になるし、涙が溢れんばかりに幾筋にも頬を流れ、顎から滴り落ちていく。

 荒げた声を響かせた「うわぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁああっ!!!」
 高杉は俺の反応を見て万斉に指示を出す。
「奴をホルマリン漬けにしとけ。この鬼副長の精神を壊すのに丁度いい品物だ」
「分かってござるが……土方を余り弄ぶのは可哀想でござる」
「お前、何時から情が移ったんだ? 早くしろ。腐るだろうが!」
 指摘されると万斉は慌てて立ち去る。
 残されたのは俺と高杉、二人だけだ。
 高杉は偉そうに俺を犯す準備に取り掛かる。
 ズボンを下着ごと脱がせ、恥じる処を露わにさせた。
 俺の陰茎は既に勃起してある。
 見る限りではそうだろう。
「なにもしてねぇのに……陰茎の先は精液で濡れてるぜ。よほど、俺に押し倒されて感じたのか? ククク。面白れぇ」
 高杉は俺の両足を開いて股に顔を埋める。
「う、うるせぇ……そんなの、かんけ、い……ああああっ!!」
 びくん、と……身体が跳ねる。
「やぁぁ、舐めるな……ひぃぃん……あうぁぁ……舌が、舌がぁぁぁ……っ!!」
 陰茎の先端を舌で舐めるなり、口の中に入れる。
 上下に動き始める。
 びくん、びくん、びくくくん。
 じゅぽ、じゅるるる、じゅぽぽぽ。
 身体がすぐさま反応する。
 それと同時に、厭らしい水音が聞こえる。
 頬を紅潮させる。
 荒息が漏れだした。
 喘ぎ声も過激になる。
「なめ、る……な……ひぃいぃん……あぅぅぅ……んんんっ、やぁぁぁ……あっあああっん……こんなに……したら……はぅぅぅ……いっ……!」
 俺の最高に感じる場所、性感帯は陰茎の先になる。
 高杉はそこばかりを責める。
 両足ががくがくと震える。
 間もなく絶頂に達する頃だろう。
 精液の量が半端なく溢れている。
「イキたいのか? 土方さんよぉ?」と、高杉に云われる。
「…………」
 黙り込む。
 絶頂には達したくはない。
 奴に快楽の表情を見せたくないから。
 抗うだけだ。
 すると、高杉は唐突に陰茎の下にある穴に手を五本全てを挿入させる。
 手首までだ。
 内部で指が動かされた。
 血が流れ落ちる。
「痛い、痛いぃぃぃぃ! 抜け、抜けぇぇぇぇぇぇぇっ! ひぃぃぃあああぁぁああっ!!!!」
 初体験に俺は、雷が落ちたかの如くの激痛が、身体を駆け抜ける。
 唾液が口端から漏れる。
 涙の量も倍増されていく。
 穴に挿入した片手は赤く染まる。
「ここの締まりは最高だぜ! ククククッ……キャハハハハ……ッッ!!!」
 狂気にも似た歓喜が周りに響き渡る。
 おかしい。
 嫌だ。
 指が第二の性感帯を刺激する。
 内部は恐らく血で満たされている。
「はぃぃ、あぅぅ……んんっ、あああっあん! 手が暴れて……いやぁぁぁ……はぁぁぁぁ……んんん……んっ!」
 各性感帯に刺激を受け、絶頂直前に俺は差し掛かる。
 もう、我慢はできない。
「いっ、イク……いっちゃ……あああっ、ああああああっっ!! 高杉! 高杉! イクイクイクッ!!!」
 腕で両目を隠し、名前を連呼してしまう。
 冷静的な態度で高杉は俺に云う。
「イキな。気持ちよくなれ、土方」
「うぅぅぅぅ……もう、もう……ひぃああぁぁあああああああぁぁぁぁっっ!!!」
 びくん、びくびく、びくん!!

 絶頂を迎えた。
 高杉の前で。
 身体から力がなくなる。
 荒息を無意識に立てる。
 陰茎から大量の精液が放たれる。
 腹部の服装に白濁液で穢れる。
 身体が非常に重たく感じる。
 高杉は穴から片手を取り出した。
 血の糸が繋がれ、絶たれる。
 また、ひくひくと痙攣を起こす。
 高杉は卑猥な土方に接吻をし、舌を絡ませる。
 息ができない。
 苦しい。
 けど……。
 俺は絡み終われば、混合した唾液が穴同様に糸を引く。
 息ができるようになり、深呼吸をする。
 濡れた舌の感触が何処か快感を得る事に気付かされる。
 またしてほしい。
 高杉との接吻を。
 濃厚で熱さが好きになる。
 俺は起き上がり、高杉に云う。
 唐突に抱き付きながら。
「告白の返事、まだだったよな?」
「ああ」
「好きだ。高杉と離れたくねぇ」
「そうか」
 俺の返事に納得したのか……落ち着いた反応をする。
 二者択一を責められた。
「俺に惚れたなら、闇の世界に身を置くか、真選組に戻るか……てめぇで決めな」 
 闇の世界での活動。
 真選組に戻る。
 どう考えても難しいものだ。
 高杉と共に居れば指名手配の一人に加わる。
 真選組を辞退すれば孤独を感じる。
 考えよう。
 違うな。
 決断はとうに決まっている。
 俺は――。
「お前の元に居たい。だから、愛してほしい。嫁として」俺が選んだのは、前者だった。
 正直、後者を選びたかった。
 昔からの付き合いだからなのだが、高杉から離れたくなかった。
 離れれば……後悔するかもしれない。
 それは嫌だ。
 俺は高杉が居なければ自我が保てなくなりそうだからだ。
 すまねぇ、お前達――こんな俺を信頼を裏切る行為をして。
 好きな人に付いていく。
 例え、犠牲が出したとしても。
 決めた事に従うまでだ。
 高杉の判断で俺は行動をする。
 闇の世界に身を投じる。
 ただ、それだけだ。
 高杉は俺の頬を触れる。
 反応する。
 頬を紅くさせ、緊張する。
 なにをされるのか……。
 高杉は首に口を当て吸い上げる。
「……っ!」
 敏感に反応してしまう。
 俺の状況にクスリと笑う。
「さすがは、俺の嫁だ。コノヤロ――」
 はい?
 今、なんて云いました?
 コノヤローって。
「別に言ってみただけだ、わりぃのか?」
「悪くないです」悪いと云えば、なにかしでかすか分からない。
「よし。じゃあ、行くとするか……裏切りの土方副長殿」
「……そうだな、俺は裏切り者だ」
 醜い人間だ。
 闇に染まる人間だ。
 それでも、俺は生き続ける。
 全ては高杉のために。
 捧げよう。
 人類が敵になろうとも、立ち向かうだけだ。
 敵は大体、滅び行く。
 しかしだ。
 滅ばない敵は居る。
 俺は高杉から使命を与えられる。
 残酷にも内容は躊躇うものだった。
 
 真選組を潰しにいけ。

 この言葉を聞いた当初、両目を大きく開く。
 未だに未練がある俺に真選組潰し。
 無理だ。
 できない。
「どうしてだ? お前は俺を選んだ。簡単なもんだろぉが」
「……分かった」思わず、承諾をしてしまった。
 後戻りはできなくなる。
 俺は顔を俯けにし、肩が思い感覚がある。
 高杉は三味線を弾いている。
 近くでも万斉が三味線を。
 そして、真横には山崎の生首をホルマリン漬けの器に入っている。

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