NOVEL

□恋愛には危険が付きもんだ〜血塗られた紅い糸〜
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 松陽は問いかける。
 頷く桂。
「ふふふ、ふははははははははっ!」松陽は唐突に笑いだす。
 土方と桂は唖然とする。
「愉快愉快。貴方達の協力心は素晴らしく思えます。ですね、こうはどうでしょう?獣を産んだ母体は……」
 片手にもう一本の小刀。
 土方の脇腹を突き刺した。
「ガバッ!?」
「土方殿!」
 小刀からは血が漏れだす。
 土方から涙が溢れる。
 みんな、すまねぇ……俺はここまでしか……。
 諦めかけていたそのときだ。
「人生を終えてなんになるんですか? 土方さんよぉ?」
 ここで俺の登場だ。
 襲い感じであるが土方が生きてて幸いだ。
 さて、松陽を倒す前に条件を云わんとな?
「松陽さん。お前に条件を言い渡す」
「条件? ああ、いいですよ?」
 立て続けに松陽は云う。
「貴方の条件は認識してあります。土方十四郎の命と己の命……一騎打ちで勝負すること、ですよね? 銀時」
「さすがは先生……ご存じで」俺は低音の声で答える。
 殺気が漂い始めてきた。
 後ろ側のヅラが声を出す。
「先生を殺す気か?」
 俺は立ち止まる。
 翼を畳む。
 ヅラに振り向かない。
 このままで答える。
「殺す? あの人は既に死んでる。俺が斬首したからな」
「なら、今のは……」驚くヅラに懇切丁寧に正体を教える。
「あれは精神は松陽であって、身体は違う。化け物。あるいは……虚ろの器だ」
 後に俺は木刀を捨て刀に切り替わる。
 鞘から抜刀。
 微かに笑みを浮かべて、地面を蹴り上げる。
 翼が風を切る「勝負だ! 吉田松陽ぉぉぉおおおおおおおおっ!!!!!」
 松陽の頭上に行き、刀を脳天に突き刺そうとする――のだが、透明の壁に阻まれる。
「相変わらず、短気なのですね。銀時は……しかし、それでは私を倒すなど……」松陽は片手を刀の先端に触れる。
「完全に無理と云うものだ」と、刀が粉砕される。
 持つ手から腕にかけ、絶たれる。
「なにっ!?」
 俺は翼を活用して距離を遠のく。
 地上に着地し、片腕を押さえる。
 片腕から大量の血が流れ落ちる。
 だが、痛みは感じない。
 変だな。
 普通なら激痛を招く。
 なのに……どう云う事だ?
 その答えを出したのは松陽だった。
「銀時、幼少期の頃を思い出しなさい」
「なにをいきなり……」
「幼少期に原因があります。ほら、自らが無理なら……私が思い出させてあげます」
 気付けば、俺の目の前に松陽が居た。
 指で額を触れる。
「さぁ、覚醒しなさい。銀時――」
 その言葉に記憶を司る海馬が回転する。
 現在(いま)から過去(むかし)に戻る。
 ふと、気付けば広く白い部屋に立ち尽くしていた。
 手元には刃物を持っている。
 刃が紅く染まってある。
 これはなに?
 俺はなにを……した?
 辺りを見渡す。
 床を覆い尽くすほどの子供の亡骸が埋められていた。
 天井からは紅い液体が滴り落ちる。
 俺は呆然とする。
 この刃物でこいつらを殺したのでも?
 違う。
 殺していない。
 動揺を隠せない。
 服装は紅い。
 違う。
 違うんだ。
 俺は人殺しをするほど狂気の性格ではない。
 思わず、倒れそうになる。
 意識が失われそうになる。
 俺は大声を放った。
 自らが起こした事件。

 最悪の現実。
 涙が出るほどの悲観。
 ならば、死んだ方がいいのかもしれない。
 俺は刃で首に突き付ける。
 死ぬのは怖くない。
 また、新たな人生を与えられるだけだ。
 来世なら幸せになるのだろうか。
 もちろんはそうなる確率はあるんだろ。
 さようなら、今。
 さようなら、坂田銀時。
 息を呑んで首を斬り裂いた。
 血飛沫が大量に噴出する。
 数秒間に保つ意識が遠のき、次第に喪失していく。
 視界が黒くなった。
……あれから、何時間が経過したんだろ。
 俺はふと、意識を取り戻す。
 倒れていた身体を起こす。
 周りを見渡してみる。
 変わらない風景。
 て、あれ?
 俺は首を両手で触れる。
 痛みはない。
 傷口のような痕は残されていない。
 どういう事なの?
 俺は自害したのに……。
 死者蘇生?
 そんなはず……某カードゲームじゃないし。
 夢なのかな?
 現実だったら、混乱してしまう。
 そうなる事になるだろうな。
 どうして、納得しているのやら。
 笑えちまうぜ。
「君は……成功品ですね」
 俺の前に現われた白衣を着た男。
 満足げな笑みをしている。
「記録してください。最高品が完成したと」
 男は俺に次なる試練を与えようとする。
 その間は記憶上、端折る。
 狭い空間で俺は点滴を打たれている。
 拷問椅子に座り、血腥さが漂い気持ち悪い。
 ここは何処だ?
 俺になにをしたんだ?
「気付いたようですね、銀時」
「……先生」
 先生?
 あ、そうか。
 男は松陽先生だったんだ。
 先生は俺になにをしたいのかな?
「今日から銀時は「天使」になれますよ」
「天使?」
「そう」
 云い続ける。
「銀時はいずれ、全てを崩壊させる「生贄」の使役者になる。ほら、もう少しで――翼が生えてくる。そして……」
「…………」先の話が聞きたくて無言になる。
 松陽先生は点滴を外し、注射器を腕に差し込む。
 緑色の液体が体内に注入される。
 俺はすぐに違和感を覚えた。
 それが膨張して身体が熱くなる。
 痛みも伴う。
 呼吸ができなくなる。
 背中に熱が集中している。
「立ち上がりなさい、銀時」松陽先生は指示を出してくれる。
 俺はすぐに立ち上がる。
 身体を丸める。
 熱に耐えきれない。
 俺は声を出した。
 悲鳴と同時に涙が大量に流れる。
 宙に浮いた。
 背中に翼が生えたみたいだ。
 左右、色違いだが……。
「あ……ああ……あ……あああ……」
 頭が回転する事ができない。
 生きた屍のような気分だ。
 もしかしたら、死んでいるのかも。
「死ぬのはまだ……早いですよ?」
 笑みをする松陽先生は云った。
 そこから、記憶が飛ぶ。
 松陽先生は目の前から姿を眩ました。
 大人になっても気にかける。
 でも、失踪する前の日に言い残す。

 貴方は全てを再構築するために、滅ぼしなさい。

 当初、なんの意味かは分からなかった。
 再構築で滅ぼす。
 破壊者のようで嫌だなぁ。
 ここで記憶は途切れた。
 現在進行形に戻る。
 松陽は目の前から消えていた。
 立ち位置は土方の方に居る。
 土方は涙を流し、如何にも死にそうな表情をしている。

 脇腹に刺されてある箇所はからは、出血は止まる気配はない。
 どうにかして、助けないと!
「どうしますかねぇ? ヅラ」
「このような緊迫感でよく言えたものだな。おれはヅラではない。桂だ」
 ノリの良い奴が味方で助かりますわ。
「攻略方法を教えてくれない?」ヅラに相談してみる。
「策はある」断言の回答を得た。
 ヅラは策を説明をする。
「実はおれも貴様同じく翼が生えてある。空中戦であ奴を叩き潰せさきば……土方殿を助ける事ができるだろう――どうだ? おれの策は」
 視線を真横に居る俺に向けられる。
 ああ、視線が痛い……なんて、冗談は抜きにして本気で奪還を目指す。
 ラスボスには急所を狙わなければならない。
 けれども、松陽には急所などありはしない。
 隙を見せない。
 難易度が高すぎるんだ。
 全く今の怪物は疲れる。
 俺が云うのもあれだけど?
「では、空中戦を始めるぞ!」
「行くぞ!」
 俺は翼をばたつかせて宙を舞う。
 ヅラも四枚の白の翼を披露させて空中に飛ぶ。
 俺達がかりで松陽に攻撃をするが、さっきの透明の壁に二度目で阻止される。
 邪魔な外壁だ。
 破壊できる方法はないものか。
 俺は考える。
 ヅラも考えているだろうよ。
 傷付きながらも、勝てない勝負でも、抗い続ける。
 大切な人を守るために――。
「無理ですね、土方十四郎はここで死にます。用済みですから」松陽は語るように云う。
「なにが用済みだ!」俺は叫ぶ。
「土方殿は母親であろうが!」ヅラも叫ぶ。
 俺とヅラでなんとかしねぇと!!
 敗れそうになる状況を打開できない!!
 暗闇にある道の向こうにある光が差すべき処へ。
「「俺達は貴様如きで敗れたりはしない!!!!!!」」
 光は間もなく見えてくる。
 闇は永久ではないから。
 ここいらで決着付けますか!
「「吉田松陽――ッ!!!」」
 俺とヅラは息を合わせて防壁に刀で突く。
「まだ、そのような真似を……できるわ」
 パキ。
「!」
 パキパキパキ、パキキキキッ!
 透明の壁に罅が入る。
 今にも突破できそうだ。
 俺とヅラは最後まで声を放った。
 そして――パリン。
 防壁は完璧に砕かれた。
 二本の刀が松陽の胸に突き刺さる。
 大量の血を吐く松陽は驚くかと思えば……安らかな表情をしていた。
 この一撃を待ち続けていたように。
 空洞は光に包まれる。
 暗闇が消えた。
 その光のなかで松陽は高杉に出会う。
 胸の刀に触れ、微笑する「もう、アンタの時代は終わりだ、先生」
「……そのようですね。私は結末を拒んでいたのかもしれません……ああ、これで安らかに逝けるでしょう……晋助」
「なんだ?」
「君も含めて門下生に会えて良かった」
 満足げに云う松陽に高杉は笑う。




「そうだな。さぁ、行こう」

「はい」




 空洞は次第に光が消える。
 俺とヅラは共に地上に降り立ち、松陽の居た処に見る。
 そこには二本の刀でしか残されていた。
 松陽先生は旅に出た。
 永久に続く旅路を歩んで……。
 俺は穏やかな気持ちで見続けていた。
 これで幕は閉じた。
 吉田松陽の死で闇で進行中の計画は皆無となり、土方は無事に救出された。
 だがしかし、深い眠りについている。
 起きる気配はない。
 傷は完璧に感知している。
 普通の人ではないな。
 俺は改めて思う。




――二週間後。

 万事屋銀さんは何時も通りに賑やかだ。
 神楽と新八が喧嘩しているのは、日常茶飯事である。
 椅子に座り、漫画雑誌を読む銀時も極普通の生活を満喫している。
 後、桂の方だが土方を誰も知らぬ祠に封じたらしく赤子は急成長を遂げ、今では十五歳。
 幕府から逃げているらしい。

 赤子の名前は「十五郎(じゅうごろう)」と命名した。
 そして、神威とやらは忽然と姿を消えた。
 死んだ高杉の亡骸も消えていたとの事ようだ。
 多分、松陽が連れてきたのだろう。
 まぁ、平和に戻れて良かった。
 おまけに桂の翼は銀時と同じ境遇を経てで生えたようである。
 さて、この物語はここで終わるが……多分、楽しめなかったと思う。
 なんせ、作者が適当に書いたものだからな。
 気にする必要はないぜ?










 じゃあ、またな。


























 End..........

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