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困った、というよりどうすればいいのかわからない。私の経験上こんなことをされたのは初めてだ。いつものように朝起きて身支度を済ませ職員室へ向かい夜蛾先生と一緒に教室へと向かった。今日は普通に授業があり、呪力や術式についての応用、やり方などの知識としての確認をするためのテストが行われた。テストは毎回受けているものとは大体同じものなのでスラスラと解答していき、余った時間はじっと秒針を数えてやり過ごす。そして時間になり解答用紙が集められた。
そう、ここまではいい。休憩と呼ばれる時間に入った時、変な前髪とグラサンが同時に立ち上がり私の目の前にやってきて私の机の真正面に顎を乗せてじっと見つめられているんだ。

「…………」

「…………」

『…………………』

私は交互に彼らを見つめながらどうするべきか考え、何か言いたいことがあるのかと思い首を傾げると2人は揃って同じ方向に首を傾げた。
なんだこれは…いったいどうすることが正解なんだろうか。隣からも視線を感じて黒子さんを見るとニヤニヤとした表情で私を見ていた。

『…………』

「助けろって?」

助けて欲しいというより状況説明をして欲しいのが一番だけど、意味は変わらないかと思い少し間をあけてこくこくと首を立てに2回振る。

「アンタの声が聞きたいんだってよ」

その言葉に首を傾げる。私の声になんの意味があるのか。この2人に需要はない気がするし声を発したところで私にメリットはない。そう考え彼女へ向けて2回横へ振った。

「アンタ意外に頑固だな」

頑固ではない気がする。私は興味を抱くのは構わないが生憎私に興味を向けられるほどの何かがあるわけじゃない。2人との良好な関係なども考えてない。……この思考が頑固なのか?
ゆっくりと彼女から視線を外して微動だにしない2人を見つめる。その体制…キツくないのだろうか。2人とも身長はかなりある方だ。小さな机ににこにこと胡散臭く笑っている変な前髪と少しイライラした様子で私を見つめるグラサン。側から見るととても異様な光景では?

『…………』

「…………」

「〜っだぁぁ!!なんか話せよ!色々ツッコむとこあんだろうが!」

「先に折れてしまったのは悟か。だから言ったんだ君の我慢が限界が来ると」

変な前髪はやはり辛かったのか立ち上がり腰を伸ばしている。グラサンは頭をガシガシ掻きながら恨めしそうにこちらを見つめた。

「んで、俺らにはなーーんも言うことねぇのか」

不貞腐れているのか、口をとんがらせながら私へ問いかける彼に対して首を立てに振った。

「私たちに興味がない?」

頷こうとして少し考えた…興味、、がないわけではない気がする。ただ

「関わりたくない?」

そう、関わりたくない。その返答にはゆっくりと大きく首を立てに動かした。関わったらそれだけ失ったことへの気持ちに向き合わなければならない。それはとても疲れることで立ち直るのに時間がかかる行為だ。なら最初から関わらない方がいい。

「だってさ、問題児とは関わりたくないって」

ニヤニヤと黒子さんが2人を見つめながら返す。視線を2人に戻し変な前髪は心底いやそうに顔を歪めるがグラサンは私から視線を逸らすことはしなかった。

「私を悟と一緒にしないで欲しいな…これでも優等生で通ってるんだ」

変な前髪が仮に優等生なら初日から喧嘩なんてしないだろうなとぼんやり考える。
時間になったのか先生が教室へと入ってくる。私の状況を見て口が開いていた。

「なんだ、仲良くやってるじゃないか」

少し安心した先生を見て青ざめ、ガタッと椅子を倒して勢いよく立ち上がりそのままの勢いで先生の裾を引っ張り大袈裟と思われるほどに首を横に振った。

「なんだ違うのか?」

その言葉に何度も立てに首を振るが他3名がニヤニヤと「仲良くしてただけでーす」と声を揃えた。何だこの団結力は彼らは会ってまだ2日目じゃないか。

「はっはっはっ!よかったな黛まぁでも、あんまり調子こいていじめてると……わかってるよな?」

先生…そうじゃない…そうだけどそうじゃないんだ……

「ははっこの世の終わりみてぇな顔だな秋チャン?」

私の頭に腕を乗せて上からニヤニヤと笑ってくるグラサン男を少しだけ睨み、大きなため息を吐いた。そして、

「いっっってぇ!!」

人間の弱点とも言える脛を蹴り上げた。蹴り上げた場所を抱えるように片足でぴょんぴょんと飛び跳ねるグラサンは滑稽だ。その姿を見て2人は大爆笑をしている。何食わぬ顔で私は席へと戻り背筋を真っ直ぐに伸ばし前を見つめる。

「アンタ、やるじゃん」

笑いすぎて涙目になっている黒子さんからそう言われ、ほんの少しだけ目を開いた。同級生から褒められたのは…初めてだったからほんの少しだけ嬉しかった。

「「!?」」

少し緩んだ顔を元に戻して先生を見つめる。

「おい、なんだよ2人して変な顔して」

「笑った……」

「笑ったね…」

「はぁ〜〜???俺は見てねぇんだけど!」

先生は嬉しそうにうんうんと頷いている姿が消え真っ黒になった。上を向くと青筋を立てたグラサンが「よぉ秋チャン俺にも向けて笑ってみろよ」とヒクヒクさせながら催促されたがフル無視を決め、何か喚いていたが先生の声により収まった。

その後は応用問題のテスト、テストの繰り返しで3人+私で任務へと向かう。もちろん私は参加せずぼーっと帰りを待ってる黒子さんを戦闘向きではないため後方でほぼ私と待機状態だ。

「アンタ話せないの?話さないの?」

隣で座っている私に投げかけられた言葉にどう返そうかと考えていると、木の棒を渡された。
書けと言うことだろうか。

"話さない"

「なんで?」

"疲れるし面倒"

「はぁ?そんな理由?私はアンタの方が十分面倒だわ」

そうかな?首を傾げるあ、と思い出し地面に綴る。

"話し方がわからない"

「何コミュ症?なわけ?」

こみゅ……???病気の名前??

"病気はしたことない。反転術式を使用できるようになってからは困ったことがない"

そう綴り終えた後に彼女の顔を見ると笑われた。

「ははは、あーそう言う意味じゃなくて」

どう言う意味?

"???"

「……アンタ携帯は?」

"もってる"

「貸して」

落とさないように制服のポケットに入れてあった携帯を差し出した。黒子さんは何やらぽちぽちと操作をして私に携帯を投げ返された画面を見ると家入硝子と登録された番号とアドレスだった。ずっと先生1人しかいなかったのに。

「これでいつでも会話できるでしょ」

得意げな顔で言われてしまったが実はと言うとメールは返したことがない。なので操作方法を私は知らないので彼女を見つめた。

「まさか…操作方法とか知らないの?嘘でしょ」

こくこくと頷いた。黒子さんは操作方法を教えてくれた。文字の打ち方、メールの送り方など基本的なことに困らないように丁寧に教えてくれた。

「じゃ、これで私としばらく会話ね?」

しばらく、、確かにメールの開き方だけだと不便かもしれない。せっかく教えてもらったのだしそれは了承した。

「やっと終わったかクズども」

「ひどくね?」

「それは、私も含まれてるのかな?」

「とーぜん」

「…なんかお前テンション高くね?」

黒子さんは自然とグラサンの近くに行き反転術式を使用したため、私は顔を変な前髪に向けてどうする?という意味で首を傾げた。すると変な前髪は両手を広げて「頼めるかな?」と言われたのでこくこくと頷いて彼の首に抱きついた。

「……腰にくるな…抱えてもいいかい?」

その言葉にもこくこくと頷くと彼は私を横抱きにしたので首筋に埋めるように目を瞑った。

「俺に散々童貞って言っておきながらお前もじゃねぇか」

「私を悟と一緒にしないでもらいたいな。悟と違って下心はないからね」

「その反応はどうだかな」

「どんぐりの背比べはやめとけ」

会話を耳にしながらコミュ症とは結局どういう意味だったのかと考えた。黒子さんから教えてもらった…検索?をかけて調べてみるのもいいかもしれない。もしかすると図書館にもあるかもしれないあとで調べてみよう。

「ありがとう秋もう大丈夫だよ」

目を細めて笑う彼をじっと見つめ、変な前髪をそっと耳にかけた。数本ハラハラと落ちてくるがこっちの方がスッキリして戦いやすいのでは?と思えるほどだ。

「私の前髪が気になる?」

こくりと頷いた。

「じゃあこうやって手当を受けるときだけでも耳にかけてくれるかな」

なぜ私が、いやそもそも結び方を直せばいいのでは?と思ったけどこくりと頷いておいた。

「ふふ、これからが楽しみだね」

なぜか先ほどよりも機嫌が良さそうになってしまいそのまま歩き出してしまった。そのまま歩き出しているということは私を抱えたまま歩いているということだ。

なぜ?
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