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教室へと到着し先生を先頭に扉が開かれる。足を進めながら空いている席と同級生の顔を確認。手前からグラサン、変な前髪、私の席、黒子の女の子。ちょうど真ん中あたりかと考えていると、グラサンと目が合う。目を見開き大きな音を立てながら倒れる椅子をみて足を止めた。
空気は張り詰めたような緊張感だったけど気にせずに目が合ったグラサンの椅子をそっと元に戻して自分の席へと着いた。奇行な眼差しを受けながらも先生が話す。

「──それでは、まず「いやいや!ちょっと待てよ!」

あぁ、なるほど。彼か、彼が

「…はぁ、彼女については追々説明する。今はその時じゃない。納得できないかもしれないが俺からは何も話せん。では、まず自己紹介からだ俺は──」

五条悟か

「チッ…五条悟。こんなことする意味あんのかよ。どうせ俺以外は雑魚だろ。せいぜい俺の足を引っ張んなよ」

そう言って悪態をつきながらどかりと椅子へ座り直した。次という先生の声に合わせて隣の椅子が後ろへがたりと音を立てて立ち上がる。

「夏油傑です」

優しい声色に合わせて発せられた名前はとても似合うと思った。
「次─」と言われ立ち上がる。先生がポケットの中からぬいぐるみを私に投げそれを両手でうけとめ少量の呪力を流す。

【黛秋です。よろしくお願いします】

お辞儀も忘れずに自己紹介が終わり先生にぬいぐるみを投げ返し席へ座る。あんぐりとした表情で見つめられながらも先生が続けようとした言葉もまたグラサンによって遮られる。

「ハッ、まともに話すこともできねぇーのかよ」

「先程訳ありということも話していただろう。詮索は後にしないか?」

……後で詮索されるのか私

「家入硝子」

「よし、これで自己紹介は済んだな。早速だがお前たちの力量を知りたい。今から任務に向かう」



ーーーーーーーーーーー




車で移動すること約40分都内に位置する廃ビル(…とは言っても綺麗)の前に車は止まった。
ここは所謂ブラック企業で有名な会社だったらしい。沢山の社員がリストラや自殺を重ね、悪い噂も後を立たなかったらしい。事業も傾き出し数年前に倒産してしまったようだ。
そこからは"デル"という噂から心霊スポットとしても名を馳せ、自殺をする人も後を絶たなとのことだ。

「これから3人にはここの廃ビルの呪霊を祓ってもらう」

「3人って…」

「んなのお前らに決まってんだろ。俺の実力なんて見なくてもわかんだろーが」

「五条、夏油、入家の3人で行ってもらう」

「はーーー!?!?!?!?」

「黛は俺とここで待機だ」

その言葉にコクリと頷く。それに納得がいかず私に指を差しながら声を荒げたのはグラサンだ。

「何でソイツが留守番で俺がいかなきゃなんねーんだ!」

「確かに。それは私も説明が欲しいところですね。納得はできません」

「右に同じく」

「…この件も追々話す」

「んなんで納得できっかよ!!」

驚いた。ここまで食い下がってくる人は初めてだ。強面の先生が言うと迫力があるからなのか大抵の人は諦めてくれる。やいのやいのと先生が困り果ててしまっているので、これ以上は迷惑をかけられないと思いくいっと裾を引っ張った。

「…いいのか?」

その言葉にコクリと頷いた。
暇だ…と思いながら地面を見ると蟻の行列が見えたのでその場でしゃがみ込みじっと眺める。

「黛は…表向きは4級呪術師だ」

「表向き"は"?」

「どういうことだよ。まさか使えなさすぎてーとかそんなオチじゃねぇだろうな」

「その逆だ。黛は特級呪術師だ。訳あってそれは隠してる。これ以上は話せない。故に参加する必要はない」

「は、、、まだ1年で入学したばかりだろ?そんなはずは…」

「そんなこと…普通ありえないでしょ」

じっーと蟻を眺めていると私以外の影が落ちた。顔を上に上げると至近距離でグラサンがいた。じっと見つめられ数秒の間があく。
このグラサンはきっとなんとなくわかってるなとぼんやり思っていると首根っこを掴まれ私の足は宙に浮いた。

『!?!?』

「こーーーんなチンチクリンが特級???笑わせてぇならまともな嘘つけよな」

『………(はぁめんどくさい)』

ぷらーんと左右に揺らされる中好き放題にされるがままの私に興味が失せたのか、釣り上げられる感覚がなくなり地面へと足をつける。

「まぁー見てろってこんな奴ら俺が瞬殺で祓ってやるからよ」

「私たちも行こうか」

「……そうだな」

何事もなかったかのようにビル内へと消えていった3人を見て再び蟻へと目を向けた。
帷も下ろしおえ5分ほどすると、あらゆる窓から呪霊が飛びだし悲痛な叫び声を上げて消えていく。

「ほぉ…これまたいいのが揃ったな」

先に廃ビルから出てきたのは黒子の女の子だけだった。

「五条と夏油はどうした」

「あぁ、あの2人なら…」

黒子さんの言葉を遮るように廃ビルから壁が壊れる音と爆発音が聞こえた。

「喧嘩してます」

「………はぁ…黛…いけるか?」

額に手を当てて初日から問題を起こす2人に頭を抱えているようだ。先生の顔を見て頷く。呪力を足に込めその場から飛び上がった。
上空から見ると2人は派手に暴れているようで大きな穴が空いておりそこに着地する。
私の存在に気がつかないほど罵り合っている言葉は正直聞くに堪えないし、2人が潰れようがどうでもいいんだけど、先生が困った顔をしていたのを思い出しゆっくりと2人の間に割り込む。

「…オイ、なんのつもりだ依怙贔屓野郎このままテメェもすり潰すぞ」

「だから…その口調を少しは正せと言っているんだ。反吐が出るが、、五条くんに同感だね。これは私と彼の問題なんだ手は出さないでもらいたい」

青筋を立てながら2人とも微かに残っている理性で私に話しかけるがそれを無視した。

「ハッ、威勢だけは立派だな!テメェ共々消し去ってやるよ!」

「忠告はしたから…ねッ」

まぁそうなるのが普通か。よく思われていないのは理解してる。私に向かって2人が力強く地面を蹴り私に飛びかかってくる。ため息をつきたいのをぐっと我慢し、掌を広げ腕を伸ばした。左右の手を上下に重ね勢いよく横に振りかぶりゆっくりと下に下げていく。

『……呪力、一段階解放。術式─重〈ジュウ〉─』

「「ッ!?」」

二人の動きは段々とゆっくりになっていきその場に踏みとどまるのがやっとという状態だ。
下に引き寄せられるかのように段々と腰が下がっていく。変な前髪は膝をついてしまったがグラサンは…

「くっ…そッ!」

『……相性が悪い』

グラサンは辛うじて展開しているが厄介だ。

『第二段階解放…』

「…!?」

顔から地面に勢いよく衝突してしまったみたいでとても痛そうだ…

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