短中編

□満更でもない
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受け溺愛美形×流され体質平凡。
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俺には、格好良くてハイスペックな親友がいる。
イケメン、誠実、面倒見良い、この三拍子揃っていて、男女問わず人気で自慢の親友。
そんな親友に最近、悩まされているのはここだけの話である。

「カエ、可愛い」

甘く痺れるような低音ボイスで囁かれ、耳元に吐息がかかる。
カエこと、楓がビクリと体を跳ねさせた。


「っ…、ちょっ…、カズっ」

背後から抱きしめるように覆いかぶさり、カズこと和臣が、楓のお腹に腕を回して、耳元で愛を囁く。
それは女子が聞いたら、卒倒しそうな程の色気を放っていた。
楓ですら、その熱の籠もった声に頭がクラクラして、立っているのがやっとな状態だ。

「ちゅ…、ん…、カエの匂い、堪らないな。
凄いクる…」

何度も耳朶を口に含んだり、甘噛みしたりして、とんでもない言葉を言うものだから、楓は目玉が飛び出る程に驚いていた。

「え、は…!?
ちょ、クるとか、意味わからねぇから!」

楓が和臣の腕から抜け出そうとするも、背後から羽交い締めのように抱きすくめられ、身動きすらとれない。

「その強気な態度も可愛いな」

フッと和臣が優しく微笑めば、楓の顔が朱色に染まる。

「っ…、お前、バカじゃねぇの!
眼科行けよっ、この平凡の俺のどこが可愛いんだよっ」

楓は目を潤ませて、恥ずかしさを隠すように声を荒げた。

「カエ、好きだ。
可愛い、世界一可愛いよ」

ちゅっちゅっと顔中にキスの雨を降らせて、和臣が愛しそうに楓を見つめる。
その熱く、愛情深い眼差しに楓の頭はのぼせたようにクラクラした。

「んっ、やめっ…、ぁ、もぉ…」

心臓がバクバク音を立て、目の前にいる美形の言動に翻弄される。
楓から出る声はか弱く、色っぽくて、和臣が思わず舌なめずりしてしまう程であった。

「…逃がさねぇ」

普段の優しい口調とは違う、乱暴で荒々しい声がしたと思えば、楓を見つめる和臣の瞳がギラギラとした肉食動物のそれと重なったのだ。

「っ、カズっ…」

楓は間近でその強い眼差しをとらえてしまい、全身が金縛りにでもあったかのように動かなくなる。

「カエ、もう遊びは終わりだ」

楓の体を反転させ、和臣は自らの方に向かせれば、両手首を掴み、ダンっと音が響くくらい強く壁に押し付けた。

「ひっ…!?」

あまりの素早い動きと、背中を壁に打ち付けた事の痛みにより、楓の顔が歪む。
そして喉からは情けない程に怯えた声が聞こえた。

「カエ、俺のものになれ」

射貫く程に強い、瞳の奥に見えるメラメラと燃えるような欲望の光。
それを隠そうともしないで、和臣はキスしそうな距離で楓を見つめた。

「っ、あっ…、俺…」

灼熱のような熱い瞳から目が逸らせず、楓は目を大きく見開いたまま凝視する。

「早く俺に堕ちろ」

そう言って、和臣の顔が近づいて来たかと思えば、唇に感じる柔らかな感触。
それが何か捉える前に、首の後ろをガシっと掴まれ、固定された。

「んんっ!?」

楓が抵抗しようとした瞬間、唇に這うヌメリとした質感。
まるで生き物のように割れ目から口腔へと侵入して行った。

「ひんん!!?」

楓が悲鳴を上げる前に、舌を絡め取られ、ジュっと勢い良く吸われれば頭がクラクラするくらい、何も考えられなくなった。

「んっ、ふぅ、んん…、っ…」

自分から洩れる甘い声に、一番驚いたのは楓だった。
動き回る舌と、火傷しそうな程に熱い感触、含みきれない唾液が口角から溢れる。
ジンジンと下半身が熱を帯び、自分が反応し始めている事に驚愕した。

「はっ…、ぁ、んっ、っふぁ…」

更に驚くのは、親友からキスされているにも関わらず、嫌悪感どころか気持ちが良くて堪らない事だ。
そんな楓の心境などお見通しとばかりに、和臣の口角が上がり、ご機嫌だと目を細めた。
二人の唇が離れれば、銀色の糸がツーっと延びる。
その時に目にした楓の蕩けた顔に、和臣の心臓がドクンと音を立てて跳ねた。
あまりの可愛さに、下半身直撃である。

「カエ、俺以外にそんな顔見せるなよ」

甘く囁やけば、楓はクタリと和臣に寄り掛かり、気持ちよさそうに目を閉じた。


end
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2019.4.19 管理人ゆあ



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