短中編

□やっと、気づいてくれた。
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※ヤンデレ攻×強気受

ーーー
受:三好 透(みよし とおる)
攻:赤松 蓮二(あかまつ れんじ)
ーーー


最近、どこからともなく視線を感じる事がある。
振り向くけど、誰もいなくて、でも見られてる、そんな感覚。

「三好、どうかしたのか?」

職場の同僚、蓮二が声をかけて来た。

「え、あ〜…うん、何かおかしくない?」

透が眉間に皺を寄せて、蓮二にだけ聞こえるよう小さく答える。

「おかしいって、何がだ?」

彼も同じように小声で答え、透の耳元で呟く。

「特に最近、誰かに見られてるような、そんな感じがするんだけど…」

蓮二は首を傾げ、透の頭に手を乗せる。
そして優しく、ぽんぽんと宥めるようにリズムを作った。
一瞬、透の心臓が跳ねる。
それは蓮二に触られたからなのもあるが、予期しない接触に反射したも同然であった。
そして、慣れない手の動きに、蓮二から視線を外し、俯く。

「疲れてるんじゃないのか?
大丈夫か?」

蓮二は透を覗き込むように、屈んでみせる。
二人の身長差は約20センチ。
下を伏く透の顔を見る為には、どうしても屈まないと見れない。

「疲れてるけど、大丈夫。
でもずっと気持ち悪い視線を感じるんだ…」

透は心底嫌そうな顔をして、蓮二へと視線を戻した。
そして、未だ頭の上に置いてある手を払いのける。

「あぁ、すまない。
触られるの、嫌だったな」

蓮二は大して表情を変えずに、形だけの謝罪をした。
そんな事わかってるとばかりに、透は小さく溜め息をつく。

「あんたに話した俺がバカだった。
そうやって、真っ向から否定する所、本当カンに障る」

透は悔しそうに唇を噛み締め、デスクへ戻ると再び何事もなかったように仕事を始めた。
その様子を見て、蓮二も気にした素振りを見せずに席に着く。


どれくらいパソコンに集中していたのだろうか。
気づけば周りに人はおらず、透一人がデスクにポツンと座っていた。
時計を見ると、既に20時をさしていて、いつの間にみんな帰ったんだと思う。
スマホを手に取り、1通のラインが入っていたので開けると、そこには蓮二から、何時に終わるんだ、と言う言葉が入っていた。
送られた時間を見ると、1時間程前になっていて、今終わった、と送る。
小さなオフィスなだけに、時計の針の音がやけに大きく聞こえた。
窓の外を見れば、案の定真っ暗で、小さな身震いが起きる。
夏だと言うのに、やけに体が冷えきっており、冷房がついてるんだから当たり前なのだが、その寒さが異様な不気味さを放っていた。
急に怖くなった透は、身仕度を整えると慌ててオフィスを出ようと立ち上がる。
その時に、廊下から大きな音が響いた。

「っ…!?」

透は驚き、その場にしゃがみ込む。
そして、体を震わせ、廊下へと続く扉を見た。
すると曇りガラスの向こうから黒い影がこちらへ近づいて来る。
それを目にした透は顔面蒼白になり、慌てて立ち上がろうと足に力を入れるも腰が抜けてしまい、立ち上がれない。
走馬灯のように、毎日送られてくる盗撮されたであろう写メと、お前を愛してる、と語られたメール。
更には何を食べたか、どんな下着を着てるか、誰と話して仲良くしたのか、などの文字を思い出す。
そして、スマホにメールの着信が流れた。
透は大きく体を震わせ、今着たメール画面を開く。
今、迎えに着たよ、そうメッセージが書かれてあった。

「ひっ…!?」

透は恐怖の余り、スマホを投げつけ、デスクの下に隠れる。
あの黒い影は、このメールの送り主かもしれない、そう思うと怖くて震えが止まらなくなった。
誰か助けて、そう心の中で叫ぶがどうにもならない事は自分が一番良くわかっている。
こんな時ばかり、いるはずのないと決めている神様に頼るのだ。
足音が扉の前で止まり、ドアノブを掴む音がする。

「っ!」

透は自分の体を抱き締めるように、デスクの下で小さく丸まった。
ガチャリと扉を開ける音と共に、突然その方向から声が聞こえる。
とうやら争っているようで、聞き慣れた男の声と、何かがぶつかるような音が室内に響き渡った。
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