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□思い出の家
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父親ははやくに亡くした。
母親は高1の時に亡くなった。
そう思い出して、ふと考えた。
この世界にも私が生まれ育ったところと同じ地名はある。
というより、地図に関しては全く一緒だし、なんなら駅も共通しているようだった。
それならば、もし今、生まれ育った家に行けば、生きている母親に会えるのではないのか…?
ある日ナルとリンにその話をしてみた。
「確かに…
ただ単に瑠雨が時間軸だけでトリップしてきて、今の年代が瑠雨の実際の高1と同じなのであれば、それもあり得るだろな」
「でもそうしたら、今のこの時代に瑠雨がふたりいることになりますね」
『それを気をつければ、行ってきてもいいと思う?』
「行く気なのか?」
というナルに
「もし、この世界で何か手を加えてしまったら、未来に影響してしまう可能性だってあるのではないですか?」
と心配してくれるリン。
『見るだけでいいんだ。話しかけようとも思ってないし。
…本当にただ…
ただ見たいだけなんだ』
そう伝えると
「…それならば私もついて行きます」
リンがそう言ってくれる。
『仕事あるでしょ?だから一人で行けるから大丈夫だよ?』
そう答える瑠雨だったが、ナルからも
「リンと一緒に行ってこい」
と言われ、次の日曜日に行くことになった。
前の日は眠れなかった。
数年前に死んでしまったお母さんに会えるかもしれない。
そう思うと緊張でしかなかった。