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□人形の家
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麻衣と瑠雨が目覚めたのは、ホテルにいたみんなと、ナルが戻ってきてからだった。






麻衣はナルの登場を驚いており、瑠雨はいきなり仕事を指示され、ぼーとしながら動き始める。




ナルは
「今夜中に決着をつける」
と言い、今後の話をはじめる。


あの女は子どもを探していて、取り戻したいと思っている。
富子自身をつれてくるのは不可能であるし、歳をとった富子を見ても女は納得しないだろうとナルは説明する。



綾子とぼーさんは、自分たちの身の安全を考えるべきだと言い始める。


「帰りたいならご自由に。
そのていどの霊能者なら必要ない」

とナルに言われたが、結局ナルを信じて残ってくれることになった。









作戦はこう。
手下の数が多すぎるので、護符を鬼門以外に内側に向けて貼り、結界をつくる。そうするとみんな鬼門から外へ出て行く。鬼門の外で綾子とぼーさんがかまえ、霊を散らす。
女のまわりを一時的にでも霊を減らす。

女の除霊はナルがするそうだ。


ジョンは居間で霊を散らす。



真砂子は気分が悪そうではあったが、麻衣と一緒に居間で除霊の様子を見ることにした。


真砂子は麻衣に、除霊と浄霊について話し始める。
浄霊は語りかけてこの世へのこだわりを解いてやる、霊媒にしか出来ない方法。
除霊はうむをいわさず殺してしまうこと。
真砂子は霊も人間も同じように見える。だから何か考えがあって、居間を選んだようだった。


瑠雨はリンとベースでモニターから見ていた。





ジョンが唱え始めると、子どもの霊は泣きながら居間の外へ逃げて行っているとのことだった。

そして真砂子の顔がこわばり
「でてくる…!」

の声と同時に、井戸から女が出てきた。


ゆっくりゆっくり。


その女に浄霊しようと、語りかける真砂子。
しかし井戸からは数え切れないほどたくさんの子どもの手が出てきて麻衣たちの方へ向かってきた。



ジョンが庇うが、壁までとばされてしまう。

『ジョン!』
モニターで見ている瑠雨は動こうとするが、リンに止められる。

「いけません」
『でも…』


そう言って、再度モニターを見つめる。






怨みのこもった目。
そんな目で女は麻衣たちを見ていた。


するとナルが動きはじめる。

ゆっくりと女の前へ立つ。



「お前の子どもはここにいる」

そう言ってヒトガタを出す。


「集めた子どもともども
つれていくがいい」


そう言い、女に向かってヒトガタを投げると、そのヒトガタは富子ちゃんになっていく。


そして女は富子ちゃんに手を差し出し、富子ちゃんも女に手を差し出す。

ふたりの手はしっかり握られ、あたたかい、やさしい光があたりを包み込んだ。










たくさんいたはずの子どもの霊も、みんな笑顔で浄化されていった。







女は、子どもを手に入れたから浄化したんだとナルは話す。

麻衣はヒトガタが分からず、ナルに質問をしている。
ヒトガタは魂の依代である。つまり、魂が入る器。
あのヒトガタを麻衣に見立てれば麻衣の代わりになり、それを傷つければ麻衣自身にも傷がつく。
そのくらい本物に近くなるもの…


そう説明されて、麻衣は真っ青になる。


ナルが投げたヒトガタは富子に見立てたもの。女はあれを自分の子どもだと思い、子どもを手に入れたと…。



ナルは女の素性を調べに出て行ったそう。
女の名前は、大島ひろ。
女の家が壊されて建ったのが、この家であり、富子は大島ひろの一人娘だった。
この子はある日消えて、その半年後池に死体が浮かんだそう。


要はヒトガタを作るために富子の生没年を調べる必要があったそう。


それだけ話、ナルとリンは瑠雨を呼んで部屋を出て行った。







その後みんなの中で、ナルが陰陽師だと間違った認識されていたのだった。








「ほんとうにありがとうございました。
兄も…できるだけはやく帰ってきてくれるそうです」
と言いつつも
「あの…ほんとうに…もう…大丈夫でしょうか?」

と典子さんは心配そうにしていた。



それにナルは
「心配ないでしょう。
気になるのなら家をかわってもかまいませんよ。
その方が安心できるかもしれませんね」と話していた。



そして礼美ちゃんは
「麻衣ちゃん、瑠雨ちゃん、また来てくれる?」

と寂しそうに聞いてくる。
それに嬉しそうに

「うん!礼美ちゃんが呼んでくれたらすぐくるよ!」


そう言って、指切りをして、家を後にするのだった。


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