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□人形の家
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私がナルとリンさんと一緒に住むようになって、数ヶ月がたった。







本当にありがたいことに、まわりには上手くいってくれたようで…


笹川瑠雨は記憶喪失。

しかしナルたちは過去に瑠雨と会ったことがあり、瑠雨ことを知っている。


しかしどこに住んでいるかや、瑠雨の知り合いまでは知らない。



瑠雨本人より
『親は亡くなっている』
と以前に聞いており、もしかしたら他に頼るところもないかもしれない。


なにより、瑠雨自身がナルとリンのことを記憶の片隅で覚えており、一緒にいたいと望んだ。




その結果、瑠雨の身元をナルとリンが引き受けるということになった。


ナルは未成年なので、主に動いてくれたのはリンであろうが…。





『本当にありがとう…。色々ごめんね。なにからなにまで…』





そう。これだけではなかった。



リンが保護者かわりになってくれたのか、私は学校にまで通えることになった。



学校はこの間事件でお世話になった高校。



そう。麻衣が通っている学校だ。



先生が気を遣ってくれたのか、クラスは麻衣と同じ。




私が転校生として教室に入ってきた時の麻衣の驚いた顔といったら今も忘れられないくらい。






そして、麻衣のおかげか、瑠雨の性格からなのか、すぐにみんなと打ち解けた。

もちろん黒田さんもいる。
以前に比べて明るくなり、友だちも増えたようだった。





リンには携帯電話も買ってもらった。

「何かあったらすぐに連絡してください」

今は学校から事務所に向かう時に一報いれないといけないという約束ができてしまった。



理由は…つい1週間くらい前の話。


もう少しで事務所…というあたりで瑠雨がしつこい相手にナンパにあった。




「いいじゃん、遊び行こうよー。
おごるよ??
俺、君と遊びたいんだよ」



『いや、遠慮します』



「いいじゃん、いいじゃん。なに食べたい?
あ、映画は??」


『お腹も減ってないですし、映画特に観たいものは…』

「プリクラ撮っちゃう?
あ、わかった!せめて連絡先教えてよ!」


と腕を掴まれる。

さすがに距離近くなってきたので、本格的に嫌がる。
『やめてください』

そう言っても腕の力は弱くならず、なんなら相手の近くに引き寄せられる。


『いい加減に……』
と相手を振り払おうとした時に


「おいおい、嫌がってるじゃねーか」

「離れてください」

頭の上から声がふってきたと思うと、握られていた腕が離され、誰かの背にに隠された。



声の主はぼーさんと、リン。

瑠雨はリンの背の後ろに庇われていた。



背の高いふたりが急に現れ、
「な、なんだよ、お前らは」

と少し弱気になるナンパ野郎。




「ナンパってのはな、相手が嫌がってるのを無理やりしちゃいけねーんだぞ。俺がやり方教えてやろーか?」

と言うぼーさんに対して、リンは


「大丈夫ですか?
ケガはしてませんか?
なんですぐに連絡してこないんですか。
ここからなら大きな声で叫べば事務所まで聞こえます。
叫んでもよかったのに」

と心配がとまらない。



そんなやりとりを見ていたナンパ野郎。

「んだよ。相手いんなら言えよ。
もういい」
と言い、走ってその場を去って行った。



『助けてくれてありがとう!』

そう言い、笑顔を見せるとぼーさんもリンも一安心。


そんなことがあってからリンは過保護。






ぼーさんはというと…

授業が終わり、正門へ向かうと、女子の
「なにあの人ー?」
「茶髪のロン毛だー」
「え、でもちょっとかっこよくない?」と言う声が聞こえる。


全く気にせず正門をぬけようとすると「お、やっと出て来たな」
と声をかけられる。


見るとぼーさん。

「アイス食って帰ろうぜ」

「タピオカ飲んで帰ろうぜ」

と何かと理由をつけて、あの日から3回は学校に迎えにきてくれていた。



『何かあったら、ちゃんと助け呼べるから大丈夫だよ?』

と言うと
「じゃあ連絡先教えて」
と言われ、連絡先を教えると


「なんかあったら、すぐ連絡してくるんだぞ」

と連絡先を知れて嬉しい気持ちもあり、しぶしぶ納得したようだった。




そんな平和?な日が続いたある日。

その依頼はやってきた。
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