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□サイレント・クリスマス
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しかしなかなか見つからない。


「絶対に見落としてる場所があるはずだ。
探したつもりで探していない…」
ナルはそう言い、麻衣は

「東條さんはケンジくんがいつもどこに隠れていたか知らないんですか?」
と聞く。


「私はかくれんぼに参加したいなかむたので…」
と申し訳なさそうに言う東條さんだったが、お茶を入れてきてくれた幸代さんという人に
「覚えていませんか?ケンジくんがステッキのときに隠れていた所ですよ。
子どものころ、良く一緒に遊んでたでしょ?」
と聞いてくれた。


幸代さんは「ああ」と言うが
「いいえ」と答える。



「覚えていないというか、知らないんですよ」
と続けた。

ケンジくんは見つかったことがなく、見つかる時は隠れそびれた時だけだったそう。

たぶんケンジくんはどこかに秘密の隠れ場所を持っていたんだと思うこと、そしてみんなが近くにいる時は、その隠れ家を使わなかった。

そこに隠れると鬼はどうしても見つけられなかったそう。

「そうか、秘密の場所以外じゃ隠れたことにならないから、隠れそびれたになるわけだ」
とぼーさん。


幸代さんは続ける。

「どうしても鬼が見つけられなくて降参と言っても出てこなかったり…

今思うとみんなが隠れ家のそばをうろうろしていて出られなかったんでしょうね。


全員が見つかった後で、やっとケンジくんの方から出てくるんですよ。

その時のケンジくんの誇らしげな顔…

今でもよく覚えています」





ナルは幸代さんにルールの確認をする。

「ゲームのコートは敷地内でしたか?」

「そうです。外に出るのは反則でしたから」



「隠し部屋とか隠し通路なんてのは…」


「ありませんね」




その会話を聞き、ナルは
「東條さん、子どもたちをお借りできますか?

子どもたちに探してもらう」

と言うナル。
「…かくれんぼの再現ってことか?

でも子どもたちはケンジを見つけられ…」

ぼーさんがそう言い終わる前に

「だから。

探す子どもたちの後をついていくんだ。
子どもたちが探すような場所にケンジくんはいない」
とナル。


「急ごう」と探し始める。









ぼーさんは子どもたちに

「ってわけで、みんなにそのおねーさんを見つけてほしいと思います!
わかったーー?」
と説明すると、子どもたちは


「はーーい!」
と元気に返事をする。



子どもに遊ばれながらも子どもたちとメンバーは瑠雨を探す。


「人懐っこいつーか、遠慮がないっつーか…」

「きっとみんなさびしんやないかと思います。
元気そうに見えるけど、親と長いこと離れとるわけですし」

「ってことはなに?
俺もお父さんみたいなもん!!」

「や、ないですやろか…」

「やーい、お父さーん!」

とぼーさん、ジョン、麻衣と話していると、ナルに睨ませる。





子どもが探している姿を遠目に見て、ぼーさんは気がつく。

「高い場所だ。
全然探してない!

子どもたちはさっきから俺たちも探した場所しか探してない。

だけど同じ場所でもあいつらの見てない場所があるんだ。


俺たちの目線の高さだよ!


自分たちの目線より上の高さは頭にないんだ」


「私たちも同じだ…
上の方は見てない!!!」


「そやったら、外そうなんちゃいますか?!」




そして3人はジョンの提案で外の木の上を探すことにした。




1番奥の木から見始めたジョンはすぐに声をあげる。

「瑠雨さん!」



イキナリビンゴにぼーさんは驚くが、すぐに木から瑠雨をおろす。



「まーったく。
こんなんなるまで隠れるこたないだろうが!」
とぼーさんが瑠雨を叱る。




上着も着ずに外へ飛び出した瑠雨は顔色も唇も真っ青になっていた。



ケンジくんも心配だが、瑠雨の身体も心配なぼーさん。



「これで気がすんだだろ?」
と瑠雨に話しかけるが、瑠雨は上目遣いでぼーさんを見る。


そしてナルの「見つかったのか?」とナルの声が聞こえ、リンの姿が見えると、瑠雨は再び、リンに抱きつく。





「またフリダシだわよ!!
どうしたらええの、ジョンさん!」

とご乱心なぼーさんに、瑠雨に強くくっつかれるリン。







ナルは上を見上げている。





「ナルちゃんよ、見つけてほしいんじゃなかったのか?

ちゃんと見つけたぞ。
ケンジの方から出てきたわけでもねぇ。

なのに…」

「見つけた」


ぼーさんが話している途中だったが、ナルはそう言い、指をさす。




それは教会の上の方に飾ってある像。




「そこならさっき俺も見たけど、別に変わったもんは…」


そう言って言葉を失う。






最初に骸骨の話しをしていた、骸骨。



それがケンジくんだったのだ。








「…あんな…ところに…」








リンも言葉を失い瑠雨を見ると、目が合った瑠雨はリンに笑いかけ、腕から離れる。






そしてナルのところへ行き



『ありがとう』



そう言って、今日1番の笑顔を見せた。


幸せそうな笑顔。




そのまま瑠雨は気を失い、倒れる前にナルに受け止められたのだった。
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