名簿

□女ドクターくん
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要するに闇医者だという。その女からは先生と呼べと言われた。柄崎が知らなかったなら、診られるのは入谷だろう。入谷は生唾を飲み込んだ。それに気づいた先生がいやらしく口角を上げる。

「丑嶋も不器用な奴さね。
あんた風俗嬢なんだろ。丑嶋から粗方聞いてるよ。今日はあんたが要らん病気持ってないか見せにきたんだろうよ。」

先生は酒やけで掠れた声でそう話した。
入谷は相変わらず不服そうな丑嶋社長の顔を見やる。

「うちの戦利品だ。直ぐにダメになったら困る。こいつは保険証もねえしな。」

「なるほど!社長優しいっすね!」

柄崎がそう言うと、丑嶋は柄崎の襟を掴むや否や、そのまま外へ引きずり出した。入谷はあまりに突然の行動に唖然とする。

「気を使ったんだろ。あんたが若い女だから。そのために女の私に頼んだんだろうしね。あんた大切にされてるよ。」

タバコの火を消してゴム手袋を着けながら先生は言った。椅子に座るように促され、顎に添えられた手によって口を開けさせられた。どうやら性病は喉にもつくらしい。

入谷は診察の間先生が言った、大切にされてるよ、の言葉が頭から離れなかった。あまりに馴染みのない言葉。おかげで診察はあっという間に感じられた。
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