【BL小説】みかつる短編集

□酒比べ、閨比べ(みかつる)
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三日月は他の誰かに興味はないと言ったくせに、その指はやけに鶴丸を乱してきた。
上手い。
「…離れで良かったぜ、こんな声…」
仲間の誰にも聞かせるわけにはいかない。
「我慢するでない、鶴。愛いやつめ」
三日月は、本当に酔っているのだろうか。
あまりに冴えた双眸に、鶴丸はふわふわとした頭で考える。
「三日月、ずるいぞ。俺の方がたくさん飲んだのに」
下腹部に走る甘い疼きは、三日月が確かに与えるもの。
「そうか? 俺とて飲んだぞ」
鶴と飲む酒は美味いなぁ。
目を細めて艶やかに笑う三日月が、鶴丸の腰を捉えて身を埋めてきた。
「は…」
「痛くはないか、鶴」
案じてくれるのは有り難いが、止めてくれる気配はない。
「熱い」
彷徨った手を繋がれて、恋人繋ぎで床に縫いとめられる。
三日月は、こんなにも甘い戯れをする男なのか。
初めて知った鶴丸が、目を伏せて照れ隠しをする。
それを。
「鶴、こちらを見よ」
三日月が求める。
もう、布団の中はぐちゃぐちゃで。
甘い染みやら汗やらで、ただただ欲の証が散る。
「鶴。好いておるぞ」
律動の合間に、不意に紡がれた言葉に。
「…三日月」
下腹部に血が集まる感覚が止められない。
そこへ来て、強く強く動かれたものだから。
鶴丸は堪らない。
「んぁッ」
弾けた欲に、三日月が気付いて笑う。
「鶴の負けだなぁ」
だがもう保ちそうにないのは、三日月とて同じであった。
「こちらも出すぞ、鶴」
追うように果てた三日月は、満足そうに鶴丸を抱き寄せた。
頭を抱かれて、角度のある深い口付けをする。
「鶴や。願い事は決まっておる。俺だけのものになれ」
こんな状況で、まさか告白なんてものを受けようとは。
「…驚きだぜ」
「そうか? 見たところ、ずっと俺たちは両想いのようであったが」
違うか、鶴。
確信を持って尋ねてくる三日月に、自分はそんなに分かりやすかったのかとここへ来て初めて赤面する鶴丸だ。
「愛いやつよ」
笑った三日月が、鶴丸の肌に散る三日月の所有印を指でなぞる。
「これからずっと消えぬようにしてやろう」
「…大浴場に行けなくなる」
良きかな、好都合。
「こんなになまめかしい鶴の肌を、他の男に見せるのは業腹よ」
「きみは意外と独占欲が強いのだな」
嬉しげに口元を緩めた鶴丸が、三日月の肩にするりと手を這わせた。
「三日月、…好きだ」



いつもなら伏せている目を、今夜ばかりはそうはできない。




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