クロノスの贈り物

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ポアロに出勤すると警察がいた。正しくはポアロではなく毛利探偵事務所。何事かと突っ立っていると梓ちゃんが私に気付き近寄ってくる。

「梓ちゃん何があったの?」
「実は毛利探偵事務所で事件があったみたいで。これじゃあ営業できそうにないし、マスターから今日はもう閉めてもいいって言われたのですみれさんに電話したんですけど」
「え、嘘?ごめん気付かなかった…」

来た意味なかったなぁと溜め息吐いてると刑事さん達が外へと出てくる。見知った顔ばかりなので挨拶をしていると伊達さんがちょっといいかと私を少し離れた所へと連れて行く。

「あいつ、いつの間にポアロのバイトしてたんだよ。びっくりしたぞ」
「あぁつい最近ですよ」
「松田達に偽名の事聞いてたから大丈夫だったが、危うく本名呼ぶ所だったぜ。よかったなすみれ、同じ職場になったんだからアタックし放題じゃねぇか」
「何言ってるんですか。あの人は忙しいんですよ。恋にうつつを抜かしてる暇なんてないんです」
「でも点数稼ぎはしといて損はねぇだろ?」

最後にまたなとわしゃわしゃと撫でられ、他の刑事さん達の元へと戻っていった。私もう24だし、なんなら精神的には年上ですけど。みんなして頭撫でるの好きね。

ポアロはもう閉めるというしせっかく来たけどもう帰ろうと思うが、零もいるみたいだしせめて挨拶してからにしようと思っていたら零達が揃って外へと出てきた。

「透さんこんにちは。毛利さんに蘭ちゃんコナン君も」
「こんにちは!」
「あぁすみれさん。こんにちは。来てしまったんですね」
「はい。電話に気付かなくて。せっかく来たのでせめて挨拶してから帰ろうと思って」
「もう帰るというならすみれさんも一緒にどうですか?これからそこにいる圭さんを自宅に送るんです。ついでって事になりますが」
「いいんですか?」
「えぇ」

事件の被害者だという圭さんを送るついでにという事でお言葉に甘える事にした。助手席に圭さん、そして後部座席に私、蘭ちゃん、毛利さんが乗りコナン君は蘭ちゃんの膝の上に乗っている。これ定員大丈夫なの?
実は零の車に乗りたくてあっさり誘いに乗ったのだが、助手席に座れなくて残念なんてそんな。それにしてもなんかちょっとだけ乗り心地が違うかも?そういえば廃車になってまた同じの買ったって言ってたっけか。すでに生産終了してるのに同じの探して乗るなんてよほど拘りがあったのだろう。じゃあこの車は将来廃車になる奴かな?はて、それはいつだっけか。ポアロにいた時代ってのは確かなのだが。
圭さんの住むマンションに着くと部屋まで送るとの事でみんな車を降りていく。1人残ってもあれだしと私もみんなの後を追った。そういえばこれが零がポアロに来てから初めての事件だよね。探偵の安室透としての事件は教えてもらってたからこの事件の事も聞いた記憶がある。毛利探偵事務所で拳銃自殺が起こってその時その場にいた女性が圭さんって事だよね。それで圭さんを送った先のマンションで…、

「あ〜っ!!トイレに行くの忘れてたァ〜!!もれちゃうよォ〜!!」

圭さんの部屋の前に着いた所でコナン君がトイレに行きたいと言う。零や毛利さんも行きたいと言うので部屋に上がらせてもらう事になった。玄関へと足を踏み入れた時に臭ってきたなんだか嫌な臭い。そうだ。確かここで遺体を見つけたって…。

「すみれさん?入らないんですか?」

玄関に立ち止まったまま動かない私に零が首を傾げる。できる事なら入りたくない。ちょいちょい事件に首を突っ込んでるもののなんだかんだ今まで死体など見た事はなかった。そしてこれからも見たくはない。

「あの…私ここで待ってます。なんだか気分が悪くて」
「なら尚更お邪魔させてもらって座ってた方がいいですよ。それとも…」

零が近付いて私の耳に口を寄せるとこそっと続きを口にする。

「この臭いの正体に気付いて入りたがらないんですか?」
「……じゃあやっぱり?」
「おそらく。あまり見せたくもないですし無理に一緒に来てもらう必要もありませんが…1人にしておくのも心配です」
「大丈夫ですよ。ここにいますから。さぁ透さんは行って下さい。探偵でしょう?」
「すみません。何かあったらすぐに教えて下さい」

みんなが部屋に上がって数分後。圭さんが玄関へとやって来た。

「圭さん?どうされたんですか?」
「え、えっと…」
「どこ行くの?お姉さん」

コナン君も気付いてどうしたのかと聞く。圭さんはお茶っ葉が切れたからコンビニに行くと言うのだがなんだか怪しい。コナン君がついて行くと言うので、不安に思った私も一緒に行く事にした。

「それよりどぉ?さっき途中の自販機で買ったお姉さんおすすめのフルーツジュース」
「うん!とってもおいしいよ!」
「すみません私まで頂いて」
「いいんですよ」

他人の出した食べ物を安易に口にしてはいけない零を見てきたから、現時点で怪しい圭さんから渡された飲み物を馬鹿正直に飲もうとは思わなかった。子供のコナン君のならともかく、私に渡された飲み物もすでに開けられていたからだ。この事件ってどうなるんだっけ。零視点での話しか聞いてないからなぁ。コナン君が何をしてたのかまでは詳しく知らないのだ。とりあえず油断させる為に飲んだフリして狸寝入りした方がいいのかな。コナン君も眠っちゃったようだし。
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