この親にしてこの子あり

□こどもの日
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–降谷side

世間はGWだなんだと宣っているがそんな事俺には関係ない。今日も今日とて公安に組織に探偵にとトリプルフェイスを演じている。

「降谷さん、最近仕事詰め過ぎじゃありませんか?少し休んで下さい。」
「風見、俺には第4の顔があるんだ。」
「はい?」
「それは父親だ。」
「…はぁ。」
「俺は休む為に仕事してるんだ。なんとしてもこどもの日だけはすみれを優先したい。」

数日前、萩原からメールが届いた。添付された写真には折り紙で作られた鯉のぼりが写っていた。

《これ3年前にすみれちゃんから貰ったんだ!いいだろ〜羨ましいだろ〜?》

ドヤ顔する萩原が容易に想像され俺はくっそと事務机を殴った。萩原曰く、こどもの日のお祝いをしてあげたらお礼にくれたのだと言う。

「だから俺も!こどもの日を!お祝いしたい!」
「…だからって体を壊したら元も子もないですからね。」

そしてこどもの日。最後の追い込みのおかげで朝には仕事が片付いた。今日1日何もしなくても問題はない。これで今日はすみれの為に使える。帰る前にケーキの材料でも買ってこうか。何を作ろう。ショートケーキ?チーズケーキ?すみれはいつも俺の作る物を美味しいって言ってくれるからなぁ。
すみれのふにゃふにゃした笑顔を思い出してさて行くかと席を立った時、ブーブーとスマホのバイブが鳴る。誰だと画面を確認すると番号のみが表示されているがこれはあえて登録していないだけだ。俺のスマホに奴の名前なんぞ登録したくない。

「何の用だ。」
《至急来てくれないか?》
「死ね。」

結局組織関連の事に目を瞑る事はできない為、赤井が指定した場所へ向かう事になった。

「…赤井、本当にこれ急ぎの用事だったんですか?確かに重要な件だし電話口で済むような物でもありませんが何も今日じゃなくてもよかったでしょう?」
「安室君が言ったんじゃないか。組織の事で何かわかったらすぐに伝えろと。」
「言いましたけど!」

赤井なんかのせいですみれとの時間が削られたかと思うと殴りたくて仕方がない。拳を握ってぷるぷると震えていると赤井が首を傾げる。

「何か用事でもあったのか?」
「ありました!とても大事な用事が!」
「ふむ…今日はこどもの日だし、すみれとの用事かな?」
「気安くすみれを呼ぶなクソ井!!」
「…すみれの事に関するといつにも増して口が悪くなるな。」
「もういいでしょう?!僕は行きますからね!」

資料を持ち帰る事は忘れずに俺は乱暴だとわかりながらもバンッと音を立ててドアを閉めた。

「マジでふざけんなよあの野郎。今からじゃケーキ作る時間がないじゃないか。チッ…作るのはまた今度にして今日は買って帰るか。」


すみれは買ってきたケーキにも喜んでくれたが、やっぱり俺が作ったケーキを食べた時の方が美味しそうに食べてくれる気がした。邪魔をしたあのクソ野郎には次会ったら1発ぶん殴ってやると誓った。

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