short story

□心中
1ページ/1ページ

君は最近の俺を「前より死んでない」と言ったね。
俺も最近気付いたんだ。
君に求められたから、生きている意味を感じたんだと。

「俺は君と一緒に生きてみたいと思っている。」
息をしているのかしていないのか。何も語らない寝顔に、ただ呟いた。
君に言えない心うちを隠し通せる程俺は強くない。
だからこうして寝ている君に意気地なく語りかけている。
「君の望みを叶えてしまったら、俺はまた死んでしまう。」
存在理由が亡くなってしまう。

雲平先生はこんな力いらないと思っているし、使うことは不幸だと思っている。
入れ物でしかない俺の、その中身までも否定されたら、俺自身が要らないのと一緒だ。

ぐるりぐるり。
巡る考えの中で俺は溺れてしまいそうだ。

「俺の力も君の力も、元々なかったかのように消せば。」
あるいは。
「そうしたら、君も俺もただ一人の人間としていられないかな。」

風が一層強くふいて、窓をガタガタと揺らした。

「ふふ。俺は莫迦だね。」
そんなことをしたら、君は俺を見つけてはくれないだろう。
それどころか君を更に不幸にしてしまうかもしれない。
どちらにせよ、結局俺はまた死んでしまう。
「君の存在を消してあげることが、俺の存在理由なのに。」

君を消してしまったら、俺の中の君の記憶(存在)も消えるのだろうか。
そうしたら二度とこんな莫迦な考えは起こらないのだろうか。

そっと君のベットに潜り込んで、肩口に顔を寄せた。
ようやく聞こえた君の静かな寝息にほっとして、俺も目を閉じた。


――end――






なんだか壬晴の気持ちを考えて悶々としていたら出来たものです。
切なすぎて泣きそうになっておりました(重症)。
ところで壬晴の一人称が「俺」って言うのに違和感を感じてしまいます。
マンガで見ると普通に感じるのに、文だけだと違和感があるのはなんでだろう。
挿絵も入れたかったけど、力尽きました。。。orz

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ