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□二人つくづく眺めてしまう
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血がドロリと股の間から流れる。それは太股を伝って白いシーツの上に流れ込んだ。これまでも特殊なプレイをしてシーツが駄目になった、そしてこのシーツも同じパターンだ。洗ってもこの血は決して落ちない。無駄だ。

普段の自分ならば生理中は隠すこともなく不機嫌な顔をしている。別に症状が重いとかそういう事は全くないのだが、血がどろりと身体の中から抜ける感覚が嫌いなのだ。沢山の血が出て、自分の身体から血の匂いがするのではないかと思わず嗅いで確認してしまう。その度に銀八に笑われてしまうのだ。犬みたいだ、と。失礼な、と口をへの字に曲げる。シている間はしつこく舐めてきたり、息が荒くなったり、銀八の方が犬みたいなのに。話は逸れたが、生理中は大体不機嫌である。
しかし今は別だ。真っ裸なのだから、服が汚れる心配をしなくてもいいし、シーツも買い換えればいい話だ。ああ、でも今回はマットレスも買い換えなきゃいけない。何にせよ、今はたぶん不機嫌な顔をしていないだろう。俺の身体に覆い被さり、きっと尻尾があれば物凄い速度で左右に振られているであろうぐらいに上機嫌な銀八の顔を覗き込む。銀八の目玉から自分の顔が映って見えないだろうか思案してみたが、萎えるだけだろうと止めた。

そういや生理中に行うSEXは『ストロベリーセックス』というらしい。こうして実際にやってみると血なまぐさいし、お互いに血まみれとまではいかないが指も足も血で汚れている。だから、そんな可愛い名前は似合わないような気がした。でも、シーツにてんと広がる血の海だけを見ると確かに俺が好んでよく飲むスロベリーシェイクに似てなくもないかもしれない。

「ふふ」

「どうして笑ってるんだ?」

突然に笑うと銀八は鎖骨の凹みをなにか探しているように強く舐めながらたずねてきた。こんな時でも舌は動くのを止めない。くすぐったくてまだふふ、と笑っているとお前は笑ってばかりだと呆れられた。

「俺の中から出てくる血…まるで銀八の目玉みたいだ…」

そう言うと銀八は目を見開いて驚いた顔をした。先程よりも強調されたような気がする銀八の目玉を舐めようとする。そうしたら、銀八に止められた。コイツは舐めるのは好きなくせきされるのは嫌いなのか。

「そうか、じゃあお前の中には俺が沢山いるんだな」

銀八は俺の腹の中に、何か大事なものが入ってるかのようににさすった後に頬ずりをした。銀八のふわふわの髪が腹に触れて、それがまたくすぐったくて笑う。

「じゃあ、俺は今銀八を産んでるんだな」

「そう…」

血がまた溢れて一気に外に出る。まるで銀八が、俺の身体を出たがっているように感じた。

「たかすぎ」

銀八が俺の腹に顔を置いたまま名前を呼ぶもんだから、銀八の熱い吐息が腹にかかってくすぐったかった。

「たかすぎぃ…」

何も答えずにいると、また呼ばれる。まるで子供が母親に叱られ、許してとすがりついて請いるようかそんな声だった。何処か悲しいようなそんな気がした。

「誕生日おめでとう」

「ウン」

「生まれてきてくれてありがとう」

「ウン」

銀八はそう言って、血で汚れた大きな手で俺の頭を掴んだかと思うと、頭からつま先まですっぽりと覆い抱きしめた。

母親の腹にいる時はこんなにあったけえもんなのかな、と銀八が呟いた。

ちゃぷちゃぷと二人していつまでも血の海で溺れていた。



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