妄想吐き溜め

□本音
1ページ/1ページ

白「七瀬、ごめん!急に打ち合わせ入っちゃってこの後一緒にご飯行けなくなった…」

西「ん、しょーがないやんな。分かった。お仕事頑張ってな?」

本当に本当にごめんね!って言いながら急遽入った打ち合わせに向かっていくまいやんに笑顔で手を振る






………



はぁ…

今日は久し振りに2人でデート出来ると思っとったのに…

まいやんの姿が見えなくなって一気にズシンと重くなったのはななの身体か、はたまた心の方やったのか…

きっとそれは両方で



普段お互いのスケジュールが合うことなど中々なくてデートもロクに出来てない現状やから2人で食事出来る事さえ貴重な時間やったのに…
お仕事とは分かっていても、それでもどうしたってキャンセルになってしまった事が、悲しい


西「…次は…いつ会えんねやろ…」

ポツリと出てきた言葉は誰に聞かれるでもなく虚しく部屋に響いた
再び深い溜息をついて、それでもいつまでも此処に居ることも出来ないので帰る準備をして楽屋を後にする。


重い足取りで自宅へ着くと部屋着に着替える気力もなくそのままソファーへダイブ
ほんまやったら今頃2人で楽しく食事してたはずやのに…
それを思うと今日何度目かも分からない溜息が再びつくけど、悶々とスッキリしない気持ちは行き場もなく蓄積されるばかり


まいやんの前ではなるべく聞き分けよくいるように気を付けている
毎日毎日多忙を極めるまいやん
急なドタキャンだって理由が理由やし
ななの我が儘で困らせたくないし
何よりまいやんにななの我が儘で嫌われたくない

そうしてまいやんの前では本音も言えず聞き分けの良い西野七瀬を演じている


本当だったらもっともっとまいやんと一緒におれる時間が欲しい。
こんなに忙しい毎日の中で僅かな時間さえも会えないなんて
そんな毎日に気持ちも滅入るばかりで…

西「…っ、…」

自然と両目からこぼれる涙
まいやんのいない時にこうして涙を流すのももう何度目か…

西「………ぅ、…っ…」

一度溢れた涙は止める術もなく次々溢れ出る



会いたい
頭を撫でて欲しいし
ぎゅって抱き締めて欲しい
ななもまいやんを抱き締めて身体いっぱいにまいやんを感じたいのに
どんなに泣いたって此処に涙を拭ってくれる存在はいなくて

ただただ部屋に虚しく嗚咽だけが響く
しばらくそうしてクッションに顔を埋めていると不意に携帯が震える

見るとディスプレイに「まいやん」の文字


急いで今の今まで泣いていた事を悟られないよう心を落ち着かせて、通話ボタンを押す


白「あ、七瀬?いま打ち合わせ終わったよ」

西「……ん、お疲れ様まいやん。」

受話口から聞こえたまいやんの声に、それだけで胸がぎゅってなった。

白「七瀬、今日は本当にごめんね…この埋め合わせは絶対するから!」

西「気にせんでもええよ…お仕事なんやし、仕方ないやろ。」

白「ん、有難う…でもまた暫く会えないね」


西「………」

白「…七瀬?」

仕事で疲れて眠いのにこうして電話をして来てくれるまいやんの優しさにたまらなくなる

西「ううん、何でもない。…それより明日も朝から雑誌の撮影やなかったっけ?」

白「ん?うん」

西「早よ寝んと明日しんどくなるで」

白「…うん」

西「ほな、明日もあるしゆっくり寝てな。」

電話ありがとな。そう言って電話を切ろうとした

白「七瀬」

西「…ん?」

白「会いたい」

まいやんの言葉にドキリとする
そんなん…ななも会いたい

…けど

西「………明日もお仕事やろ?」

そんなんまいやんの身体しんどくなるだけやん

白「今から七瀬の家行っていい?」

西「………」

白「七瀬に、会いたい…」




西「うん…ななも…会いたい…」

ななの声は震えてた

白「…うん、待ってて」

そうして切られた電話。
やけどななの耳に残る余りにも優しいまいやんの声音に、そしてこれからまいやんに会えるんやと思う嬉しさに心ははやるばかりやった。


そうして数十分後、部屋のインターホンが鳴る
ドアを開ければ少し息を切らしたまいやんが立っていて
迎え入れた玄関に入ってくると同時に抱き締められる


白「七瀬…ただいま」

西「ぅん、…おかえり、まいやん」

抱き締められていた腕が少し緩んで、顔を覗かれる

西「………?」

見つめられて頬を撫でられる

西「まいやん?」

言葉も発さずただただ見つめられる

と、

不意に合わせられる唇
でもそれは一瞬の事で

白「七瀬…何でそんな可愛いの…萌え…」

って少し冗談交じりな言葉と共に再び抱き締められる

西「ふふ、なんやのそれ」

思わず吹き出して笑ってしまった

やけど次の瞬間




グゥ…

西「……」

白「……」

ななのお腹から空腹を知らせる合図

白「…軽く何か作ろっか。一緒に食べよ?」

そうして優しく微笑んでくれる彼女に愛しさが増す

何食べたい?って聞かれながら2人でリビングに向かう。
そうしてまいやんが作ってくれた晩ご飯を2人で食べて、それぞれお風呂に入る。
あとは寝るだけになってベッドに行こうかと思ったのに、まいやんはソファーに座ってななを呼ぶ。

西「?」

近づいていけば腕を引かれてまいやんの身体に収まる身体
後ろから抱き締められる形になって顔を首にうずめられたから少しこしょばいくて

西「…ん、…まいやん、もういい加減寝やんと明日しんどいで?」

白「んー…でもあと少し」

充電。って言ってななをぎゅっとする

西「………」

白「…七瀬」

西「…ん?」

白「なーなーせ」

西「ふふ、だからなんやの?」

白「いつも有難うね」

西「なん…?」

白「いっぱい我慢させちゃってごめんね」

西「………」

白「もっと甘えて良いんだからね」

西「………」

抱き締められる腕はそのままで
後ろから聞こえてくる言葉

西「なな…は…別に、無理なんて…」

取り繕おうと思った言葉は
喉の熱さに最後まで紡ぐことが出来んかった


白「…うん、いっぱい我慢させちゃってたね」

気付いてあげられなくて、側にいてあげられなくてごめんねって頭を撫でてくれる

なんで…
なんで…

重荷になりたくないのに
視界が滲む
まいやんの言葉に堰を切ったかのように溢れて止まらない涙

涙が収まるまでまいやんはずっと抱き締めてくれてた



落ち着いた後、布団に入って2人で向かい合わせに抱き締め合う
もうあと数時間かでまいやんはこの部屋を出て行く

西「…まいやん…」

白「ん?」

西「ごめんな?」

白「………」

西「なな、まいやんを困らせたくないねん…それに嫌われたくない…」

白「………」

西「やけど…今日やって結局まいやんの負担になって…」

白「七瀬」

西「…」

白「負担だなんて感じてない。それに今日は私の我が儘で来たんだから」

西「………うん…ありがとう…」



西「な、…まいやん…」

白「ん?」









西「もっと…ななの事ぎゅってして?」









まだ素直に我が儘を言えるには時間がかかりそうやけど…それでも少しずつまいやんに我が儘を言えるようになりたい

やって、

ななの言葉にこんな風に笑ってくれるまいやんの顔を見たら、我が儘を言うのも悪くないのかも知れんと思えたから。


そうして2人の距離をゼロに抱き締め合って
まいやんの匂いを感じながら、ななは眠りについた

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ