妄想吐き溜め

□名前
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生まれてから今まで何千何万と数え切れない程呼ばれてきた


「麻衣」
「麻衣ちゃん」
「まいやん」


なのにどうして








「まいやん」

たった4文字
そのたった4文字の言葉を彼女が口にするだけでこんなにも私の心は



白「ねぇ美彩」

衛「何?」

白「名前呼んで」

衛「は?」

白「だから、名前、呼んでよ」

衛「…誰の」

白「私の」

衛「何いきなり」

白「いいから」



衛「…まいやん?」

え〜改めてそう言われると呼びにくいんだけどって言いながらも渋々ながら名前を呼んでくれる。

白「………」

けれど


白「だよねぇ…」

はぁ〜と溜め息をつきながらそう言葉にして
机の上で先程から大して読んでもいない雑誌の上に突っ伏す

衛「ちょっとなんなの!!」

言わせといてその反応!?って机の向かいに座る美彩は文句を言っている。
そう、そうなのだ。
別に名前を呼ばれたからってどうって事ない。
どうって事ない…はずなのに…

そうして突っ伏した視界の先に
賑わう楽屋の中で彼女の存在を捉えた瞬間、先程名前を呼ばせた美彩に「あははっゴメンゴメン」って頭を上げて軽く謝り、飾りと化していた雑誌に視線を戻す

近付いてくる気配を視界の端に捉えながら

西「あ、美彩〜」

衛「ん?あ、なーちゃん!」

おはよーってお互い挨拶を交わしている。
次に降りてくるであろう言葉に意識などしてない素振りで、視線は雑誌から動かさずに私は次の言葉を待ちわびている


西「まいやん、おはよう」


静かに降ってきた柔らかな彼女の言葉に

白「ん、おはよ、七瀬」

彼女と目が合えば自然と口角は上がる
次に彼女の視線は目の前に座る美彩に移動して

西「美彩聞いてや〜」

って、
美彩の隣に座る
彼女の口から放たれるその物腰柔らかな声音を一語一句聞き逃さないよう、視線は雑誌に戻しながらも私の意識は彼女に向いている

雑誌の内容なんて、始めから頭になんて入っていない








まいやん、おはよう

時間にすればその間わずか1秒たらず
けれど彼女から発せられる私の名前はその僅か1秒たらずの世界でさえもこんなにも私の心を容易く色付かせて



七瀬














七瀬…


彼女の声が
柔らかく笑うその笑顔が
香りが
彼女を形成するその存在全てが
こんなにも容易く私の心を支配して


けれどその想いは今日も心の中で形を成さないまま









そうして今日もただただ


七瀬の言葉に心は囚われて、離れない















……………














ななには誰にも言えん秘密がある


それは飽きる事なく
何度口にしても色褪せない
その言葉を口にするだけで
そうしてその言葉で微笑んでくれる彼女を見るだけで
ななの心は一瞬で彼女に囚われる






まいやん




文字にすればたったの4文字


そのたった4文字がこんなにもななの心を捉えて離さない








気持ちを
想いを

言葉として形にする勇気を持てんから



彼女の名前を呼ぶ時

ななの「好き」の想いをのせる





なぁ、まいやん…















そうして隠した
隠せない想いを
今日も貴女の名前にのせる




「まいやん、おはよう」




ななは
まいやんが、好きです

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