短編&中編
□至急Helpを!
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ここは調査兵団本部。そこに所属する調査兵の上官達は次の壁外調査に向けて今日も仕事に明け暮れる。
そんな忙しい上司に混じり、兵士長の執務室で仕事を手伝っていたエミリの元へ二通の手紙が届いた。一つはミカサから、もう一つはアルミンからのものだ。
丁度休憩時間となったため、執務室のソファに腰掛け手紙を開封した。まずはミカサから送られた手紙だ。
『姉さんへ
誕生日プレゼント、ありがとう。
すごく可愛いマグカップだった。とても嬉しかった。
大切に使う。
あと、私も姉さんと会いたい。一緒にお買い物とかお出かけがしたい。
姉さんの都合の良い日に合わせるから、空いている日があれば教えてほしい。
私も姉さんのこと大好き。
ミカサより』
全部読み終えたエミリは、感動で腕をぷるぷると震わせる。それに合せて便箋もカタカタと音を立てて揺れていた。
「エミリ、どうかしたか?」
エミリの隣で優雅に紅茶を啜っていたリヴァイが、彼女の小さな異変に気づき眉を顰める。
「……兵長……私はいま、すごく感動しています!!」
「は?」
感動の涙を一筋流し、ミカサが綴った手紙を胸に当てるエミリは、完全に可愛い弟話を語る時と同じ状態へと化している。
「妹の誕生日に贈ったプレゼント、喜んでくれたんです!!」
「……そうか。そりゃあ良かったな」
「その後に、また一緒にお出かけしたいって! 私も姉さんのこと大好きって!! ミカサ〜〜!!」
キャーと頬に手を当てはしゃぐエミリは、残念なことに変人だ。弟妹思いなのは構わないが、彼女の愛は度が過ぎている気がする。というか、こいつシスコンでもあるだろ。無表情のリヴァイは心の中でツッコミを入れながら、静かに紅茶を味わう。
「さ〜て、次はアルミンっと!」
その調子で二通目の手紙を開封する。リヴァイはただこれ以上暴走しないことを祈った。
エミリが手紙を読んでいる間は静かだ。読む方に集中しているから。
数分の静寂。その後、突然エミリがバッと立ち上がった。
「な、ななな……」
「おい、どうした」
何故か『な』を連呼するエミリ。何かあったのだろうか。これは今までにない反応だ。
「き、緊急事態です!!」
「は?」
「兵長! 私、部屋に戻って返事書いてきます!!」
「おい、ちょっと待て」
「仕事は明日必ずしますから!! 失礼しました!!」
リヴァイの言葉も耳に入っていない様子のエミリは、そのまま勝手に暴走し執務室を出て行った。
一人部屋に取り残されたリヴァイは、ティーカップを片手に彼女が出て行った扉を暫くポカンと見つめる。そして、小さく舌打ちを鳴らした。