短編&中編
□捜査開始!
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リヴァイが向かった先はハンジの研究室。散らかり放題の研究室にはあまり入りたく無いが、こればっかりは仕方が無い。
ペトラ達に聞く方が早いとも思ったが、エミリの返事を聞く限り、彼女達も口を割らないだろう。そう思って、まずはエミリの上官であるハンジの元へ行くことにしたのだ。
「おい、ハンジ。入るぞ」
扉をノックしてガチャリと扉を開ける。そして舞う埃にリヴァイは顔を顰める。
「やあ、リヴァイ! 珍しいねぇ〜君から来るなんてさっ!」
「……相変わらず汚ぇ部屋だな」
潔癖症のリヴァイからすればこの埃だらけの汚い空間に入るのは本気で嫌だ。よって、入口に立って話すことにする。
「なになに? 巨人の話でも聞きたくなった?」
「あ? あるわけねぇだろ。エミリのことだ」
「え? エミリ?? 彼女がどうかしたの?」
ハンジのその発言から、もしかすると彼女もエミリの事情を知らないのかもしれない。だが、一応これまでにあったことを話してみる。すると腹を抱えて大声で笑い出した。
「あっはははは!! リヴァイかっわいそうに……!! 恋人に放っとかれてるの?!」
「うるせぇぞクソメガネ」
「あんまりにもリヴァイが愛想悪いから、エミリも嫌気がさしたんじゃない? プッククク……!」
相談相手を間違えたかもしれない。ハンジは完全に面白がっている。リヴァイは未だに笑い続けるハンジにゲンコツをお見舞いした。
「いったあああ!!」
「てめぇに聞いた俺が馬鹿だったようだ」
頭を押さえしゃがみ込み、痛みに悶えるハンジを上から見下ろす。すると、研究室の扉がガチャリと開かれた。
「分隊長!! この書類にっ……え、リヴァイ兵長?」
扉を開けたのは、一束の書類を手にした第四分隊の副分隊長のモブリット。ハンジの研究室の汚さに、あまり訪れることのないリヴァイが何故ここにいるのか不思議だった。
「丁度いい、このクソメガネじゃ話にならなかったところだ」
「はい?」
また何かやらかしたのだろうか、うちの分隊長は……目を半眼にしてハンジを一瞥した後、リヴァイへ視線を戻す。
「エミリのことについてだ」
「え、エミリ?」
自分の班の部下の名前が出され、モブリットは目を丸くする。モブリットも、リヴァイとエミリが恋仲であることを知る数少ない人物だ。
「何かあったんですか?」
「最近、あいつの行動が可笑しい」
「可笑しい……とは?」
さっきハンジにした説明と同じことをモブリットにも話す。話を聞き終えたモブリットは、顎に手を添え考え込んでいた。
「特に不審な動きは見られませんでしたが……日曜日だけ、ペトラと出掛けるんですよね?」
「ああ。しかも毎週、な……どう考えても不自然だ」
「確かに、そうですね……」
けれど、やはりエミリはこれまでと変わらず、至って普通に仕事や研究を手伝っている。もし、リヴァイに秘密で何か考えているのなら、それなりにどこかでボロが出ても可笑しくはないはずだ。
「エミリとは、その事に関して話をしたりしたんですか?」
「いや……問い質しても、答えになるような事は言わねぇな」
「そうですか……」
再びモブリットは考え込む。何だかんだ、新兵の頃からエミリを見てきた。これでも、彼女の性格や考え方は理解しているつもりだ。
「……もしかしたら、隠し事をしていることに意味があるのかもしれません」
エミリの人柄や考え方、性格から分析して出た結論がそれだった。
「エミリは、まず嘘をつくこと自体が苦手ですし、リヴァイ兵長が思うような怪しい事はしていないとは思いますよ」
いつも正直で真っ直ぐなエミリが、リヴァイを裏切るようなことをするとも考えにくい。
「少し、様子を見られてはどうですか?」
「…………だが、あいつが不審な動きを見せてから、もう二ヶ月以上経っている」
リヴァイとしては、さっさとその隠し事やらを止めて自分の傍にいてほしい。そして、今まで放ったらかしにされていた時間を埋めたいのだ。
「リヴァイ……」
そこへ、ポンとリヴァイの肩へ手を置くのは、復活したハンジだ。リヴァイは鬱陶しそうにハンジに目を向ける。
「……男の独占欲は見苦しいよ! 普段からそんなんだから、エミリも嫌になったんだよ、きっと!」
相変わらず気遣いの欠片も無いハンジの言葉に、リヴァイの眉間に皺が増える。そしてさっきよりも強く、ハンジの頭を殴って研究室を出て行った。
「はぁ……分隊長、あんたいつか兵長に殺されますよ!」
「ふふっ……だって仕方無いだろう!」
殴られてジンジンする箇所を押えながらハンジは立ち上がる。
「エミリのことで悶々としているリヴァイが面白くってさ! それに、モブリットもなかなかっ」
「もう、その話は後ででいいですから! まずはこの書類に目を通して下さい!!」
「え〜……」
モブリットに書類を突きつけられ、嫌々それに目を通すハンジであった。