短編&中編
□きっかけは不可解で
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『可笑しい』
リヴァイがそう思い始めたのはつい数日前のこと。何が可笑しいのかというと、それはエミリの言動だ。
今から二ヶ月ほど前になるだろうか。執務室に紅茶を運びに来たエミリに、リヴァイがデートの誘いを持ち掛けた時のことだ。
「え、今週の日曜日ですか?」
「ああ。最近、二人でどこにも行ってねぇからな」
最後に二人が外へ出かけたのはその日からもう一ヶ月ほど前だ。じゃあ今日までの間何をしていたかって? それは聞いたら野暮というもの。
とにかく、部屋で過ごしてばかりで外に出掛ける機会が少ない。日曜の訓練は午前だけ、たまには外に出るのも良いかと提案したリヴァイだが、エミリは申し訳なさそうに眉根を下げる。
「えっと……すみません。今週の日曜日はペトラとお出かけする予定が……」
「……そうか。なら仕方ねぇな。また別の日にするか」
自分の班員であるペトラとエミリが入団時から仲の良い友人同士であることはリヴァイもよく知っている。何より、最近はリヴァイと共に過ごす時間の方が多いため、友人との時間が疎かになっていた。調査兵といえどエミリも年頃の女の子。まだまだ遊びたい盛りだろう。
「俺のことは気にしなくていい。ペトラと楽しんで来い」
「はい!」
嬉しそうに顔を綻ばせるエミリの頭を優しく撫でてやる。また来週の日曜にでも二人で出掛けるか、と自分の中で予定を組んだ。
しかし、次の日曜もまたもやペトラと出掛けると言ってエミリは街へ出てしまう。その次の日曜も、その次の日曜も、更にその次の日曜も……その次の日曜も……
流石のリヴァイも苛立ちが募った。一体全体どうなっているのだと……。
そして、そのまた次の日曜。
「兵長! 今日のお昼は外に食べに行きません?」
やっと、やっとだ。エミリの方からお誘いが来た。ずっと放ったらかしにされていたリヴァイからすればこんなに嬉しい話は無い。勿論、表情には出せないが。
そして私服に着替え、二人は街へ出掛けた。しかし、デートという淡い期待は一気に砕かれる。
それは何故かと言うと、エミリが外食へ行きたかった理由は、行きつけの店がその日、食べ放題を企画していたからだった。最初はフィデリオ、オルオやペトラ達と行く予定だったが、三人とも先約があったため最終的にリヴァイのところに行き着いたということだ。しかも、エミリは店でモグモグ食べてばかり。
こんなにも色気の無い食気だけのデートがあるだろうか。そもそもこれはデートと呼べるのか。呼べるわけが無い。幸せそうにご飯を食べるエミリの顔を見るのは良いが、あまりにも仕打ちが酷すぎる。リヴァイは酷く落胆した。
次こそはまともなデートをと思いつつも、またもやペトラ達と出掛けると言ってリヴァイは誘いを断られる。その次の日曜も、その次の日曜も、更にその次の日曜も……その次の日曜も……
どう考えても怪しすぎる。これまで、エミリが日曜限定でペトラら友人達と出掛けることがあっただろうか。ない。たまにならあるが、こんなにも日曜だけ連続で外出するなどどう考えても不自然過ぎる。
それ以外はこれまでと同じ、至って普通の日常だった。仕事が終われば共に部屋で話をしてイチャついて、時々夜も過ごしてと、恋人らしい甘い時間を過ごしている。日曜だけが異常だった。
エミリ本人に直接話を聞いても、『え、特に何も?』と返ってくるだけ。エミリに聞いては駄目だ。そう判断したリヴァイは立ち上がった。
事情聴取をしてやる、と。