短編&中編
□オトメとバカ
2ページ/3ページ
「と、言うわけで……これから今ここにいるメンバーで解決策を探していきたいと思いまーす!!」
エミリは、手をパンパンと叩いて、場の空気を無理矢理盛り上げようする。
ここにいるメンバーとは、エミリ、フィデリオ、オルオ、リヴァイ、エルド、グンタというよく分からない組み合わせである。
というか、エルドとグンタはともかく、リヴァイは無理矢理付き合わされているようなものだった。
「兵長、いいんですか?」
一応念のためグンタが尋ねる。リヴァイは食後の紅茶を啜りながらいつも変わらぬ無表情で、
「構わん」
と許可を出した。何だかんだ、自分の班員達のことだ。話に参加するつもりは無いが、ポジション的に見守るくらいが丁度良いとか思ってる。
「ところで、まずオルオはペトラに何をしたんだ?」
エルドが今回の騒動(?)の原因について答えを求める。オルオは知られたく無さそうだが、原因を知らなければ話し合いが出来ない。
「実はですね……」
そしてエミリは話し始める。オルオがペトラにやらかした、阿呆な話を。
『それが、さっき訓練の最中にオルオに話しかけられて……』
『ほうほう』
事はエミリが予想した通り、訓練中に起きたようだった。というか、訓練の最中に何やってんだ、と今すぐオルオの元へ行き文句を言いたかったが、ペトラの方が大事である。
『そしたら、"今日、お前誕生日だったよな?”って聞かれたの』
『ふむふむ』
『だから、”そうだけど”って返したら急にソワソワしだして……』
『へー』
オルオはペトラに『誕生日おめでとう』と言いたかったのだろう。しかし、オルオは変な所で意地を張ったりする奴だから、照れ臭くてモジモジしていたようだ。
『だから、”それがどうかしたの?”って聞き返したら……』
ペトラの拳がわなわなと震え出す。
『オルオってば、なんて言ったと思う……?』
『なんて言ったの?』
『”もう17歳だってのに恋人もいないのか。何なら俺がなってやってもいいぜ”って言ったのよ!!』
『うわ〜……それは最低だ』
『本当よ! 全く……!!』
この時、ペトラは「このつぶれ顔!」と怒りを顕にしていたという。
「──それで、ペトラがオルオのお腹に一発拳をぶち込んだ、というわけです」
エミリが話を終えると、冷ややかな視線がオルオに注がれる。その中にはリヴァイのものも含まれており、オルオは居たたまれなくなる。
「オルオ、デリカシー無さすぎだ。いや、もうそれ以前の問題だぞ」
「女心というものは繊細なんだ。いつもの冗談のつもりで言ったのかもしれんが、それは流石にないな」
グンタの辛辣な言葉、からのエルドの追い討ち。
「ていうか、腹にグーパンチで済んだのが奇跡だろ。『顔も見たく無い』とか言われたら終わりだったな。いや、もしかしたら本当はそう思ってるかもなぁ」
フィデリオは煽り、
「オルオよ、お前こそ17にもなってたかが『おめでとう』くらい何故言えねぇんだ。馬鹿か」
リヴァイには罵倒され、オルオのハートはボロボロになっていた。
「兵長の言う通りだよ。普通に『おめでとう』って言えば良かったじゃん」
「ちゃんと言えるように練習したんだよ!!」
「練習した結果がこれでしょ。どういう練習したらあんな上から目線な言葉になるわけ」
そのエミリの言葉で、オルオはトドメを刺された。意気消沈しているオルオを放って、エミリは話を続ける。
「とにかく、せっかくペトラの誕生日だから、やっぱり本人には笑顔でいてほしいというか……この問題児とどうにかして仲直りさせたいんです」
「誰が問題児だよ!」
「私からしたら好きな子いじめする問題児だよ」
エミリにそこまで言われたオルオはもう何も言い返せなくなった。
「なら、花束とかプレゼントしてみたらどうだ?」
「そうだな。エミリなら植物にも詳しい。良いんじゃないか?」
エルドとグンタの提案に、エミリは『う〜ん』と考え込む。やはりここは同じ女であるエミリに最終的な評価をもらうのが一番だ。
「う〜〜ん……」
「そんな悩むことかよ」
未だにうんうん唸り続けるエミリに、フィデリオが口を挟む。ちなみにまだ頬は、赤いままだ。
「確かに花束は良い案なんですけど、オルオが女の子に花束贈るって……ごめん、想像できないわ」
「ンだとぉ!?」
エミリの言葉で石と化していたオルオが再起動。
「だって、オルオがペトラに花束プレゼントしてみなよ。ペトラ絶対、『頭大丈夫かな?』って思うって」
「「「確かに」」」
「う、うるせぇ〜!!」
キレイに声を揃えて頷くフィデリオ、エルド、グンタ。それにオルオは講義する。そしてリヴァイは静かに二杯目の紅茶を啜っていた。
「じゃあ……甘いお菓子とかか?」
「オルオが甘いお菓子のプレゼントねぇ……」
エミリとフィデリオは、想像を膨らませる。その三秒後、
「「ないな」」
やはりキレイに声を揃えて首を振る。
「お、お前らなぁ……何が解決策だよ!! 協力する気あんのか!!」
「あるよ〜だってペトラのためだもん」
「俺はまあ、おもし……オルオのためにこれでも」
「お前、いま『面白そう』って言おうとしよな?!」
指摘されたフィデリオは、ぷいっと顔を逸らし口笛を吹いている。当たっていると言っているようなものだ。もしくはその行動もわざとかもしれない。
「そもそも、オルオがあんなこと言わなきゃこんな面倒なことにならなかったんだから」
「〜〜わかったよ!! だったら俺一人で何とかしてやる!! お前らの力なんて借りなくたって仲直りの一つくれぇやってやるよ!!」
声を上げながらオルオは食堂を出て行った。途端に静かになる空間。
「……あいつをあのまま行かせて良かったのか?」
一番最初に口を開いたのは意外にもリヴァイだった。
「良いんですよ。こういうのは、タイミングを計ろうとすればする程、上手くいかないもんなんです。大事なのは勢いですよ」
「……そうか」
自然なやり取りが一番。特にオルオとペトラのような腐れ縁で繋がる関係は、遠回しなことなど今更。流れに任せるのが一番良い。
「さて、私達はこのまま様子でも見に行きますか!!」
やっぱり最後の結末は気になる。エミリの提案に誰も反対することなく、一同は昼食のトレーを返すとオルオの後を追って食堂を出て行った。