□第5話
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夕焼けが不気味なくらいに赤い日だった。




母に村外れの森の中にある井戸まで水汲みを頼まれ出かけていた帰りだった。



その日はやけにカラスが鳴いていたため、不気味に感じ、早く帰りたい気持ちはあったが、重労働というのもあり、途中で休み休み帰った。




村に戻るといつもなら活気のある夕暮れだが、今日はとても静かだった。



夕日に照らされたものだと思っていた一面の赤色は、村人の血によるものだった。



せっかく汲んできた水の入った桶のことも忘れ投げ飛ばし、家族の安否の確認をするために自分の家へと急いで向かう。



家の中から聞こえる物音に安堵し、自分の家族だけは無事だったと息を整えながら中を覗く。



しかし安心とは裏腹に、そこには幼い弟を食べている妖怪と、その横に戦った形跡を残したまま横たわっている両親がいた。



その光景を見て少女は頭の中が真っ白になった。




こちらに気付いた妖怪と目が合い、危険を察知した体が勝手に動き、無我夢中に走っていた。




いつも慕ってくれた村の人達も、
昔からよく遊んでいた幼馴染も、
大好きだった家族も…



涙が止まらなかった。

弔いも、最後の挨拶も出来ずに逃げてしまった。




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