□第3話
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その日からおじいさんの家でお世話になりながら、家事や畑仕事を手伝った。


私が一言も話さなくても、おじいさんは理解してくれていた。
しかし村の人たちは、突然現れた無口の少女に不安を感じていた。
中には、妖怪が化けているのではないかと噂するものもいた。



そんな空気にも耐えられず、村の外に山菜を採りに行ったり、魚を捕りに行ったりすることが増えていた。

やはりここは自分の居場所ではないのだと感じ始めていた。



「(村を出る前にせめておじいさんにだけは恩返しをしたい…)」



その日も私は村の外へ出ていた。
先日通りかかった場所にたくさんの山菜が生えていたのを思い出し、その場所へ向かう。


「(あったあった)」


キノコやわらび、ふきなどがたくさんある。
おじいさんもきっと喜んでくれる。



肩に背負っていたカゴを降ろし、早速収穫を始める。
今日の晩御飯は何にしようか考えている時だった。


林の奥から足音が聞こえる。
定期的にゆっくり進む音。
動物ではなさそうだ。

人間が妖怪か、女はその方向を向き警戒した。

だんだんとその足音を立てているものが姿を現し、はっとする。


三つ編みのおさげ、大きい刀を持った見覚えのある少年。
蛮骨と呼ばれていた男だ。


逃げなければと思った頃にはもう遅く、あちらもこっちに気付いたようで目が合う。


蛮「よお!あんときの女じゃねぇか!」


蛮骨は笑顔で片手をあげ、声をかけてくるが、その笑顔が恐怖に感じ、思わず後ずさりをする。


蛮「そう怖がんなよ!あんときは傑作だったぜ!
まぁ蛇骨はお前の事ぶっ殺す気でいっけどよぉ」


思い出したように笑う蛮骨。

…全然笑えない。
やっぱりあの人は怒ってる。
怒って当然のことをしたわけだが…


蛮骨は笑いながら私に近づき、私の肩に手を置く。


蛮「お前、ちっとはいい顔になったな。
活気があるっつーか…
この間は死んだ魚みてぇなツラしてよ」

「……。」


余計なお世話だと言わんばかりに私はうつむく。
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