alchemists

□徳田秋声の場合
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B


思いっきり自爆した気分です。そう呟いた司書の顔は酷く青ざめていた。
おおかた「深夜のハイテンション」とやらで調べたのだろう。今日が3月6日だから。
好奇心は猫をも殺すとはよく言ったものだ。今回は完全に自業自得なのでフォローする気にもなれず、適当に相槌だけを打つ。
気になることを調べる姿勢はたしかに大事だが、この人は少し思慮に欠けるところがある。転生という普通なら経験できないこの状況で「それ」はもう些細な事だと思っているのだが、この司書にとってはそうではなかったのかもしれない。

「だいたい、それを僕に話してどうするの」
「すみません…でも、一人でうだうだしたくなくって……」
「うだうだって。今してるじゃないか」

きのこでも生えてきそうなほど雰囲気が暗いくせに。仕事中にその済ん息を持ち込まれるこちらの身にもなってほしいものだ。

「僕らは、もう死なない体なんだろう?」

だからもうそれも関係ないことだと言えば、そうですがそういう問題じゃないですとなぜか逆ギレされた。
転生させた側の主張、なのだろうか。前は前、今は今だと力説し始めた司書を放って談話室のある方角を見る。ここからその部屋が見えるわけではないけれど、きっと今頃はとある人物を中心に団子が出来上がっているだろうことはあ容易に想像がつく。
自分たちにとってはもはや口実にしかならないそれを、忘れられないのは、この司書みたいな人がいるからなんだろうなと、ぼんやり思った。
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