ゴーストハント夢

□放課後の呪者
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依頼はもちろん、湯浅高校という女子校の件だ。

ある席に座った生徒がみんな、電車のドアに挟まって、引きづりまわしの刑に処されたらしい。

ぼーさんの前にも、生徒達から何件か依頼があって、今や湯浅高校は怪事件だらけだ。

それでも、ナルにとって憑依霊は専門外だからと追い返していたのだけど、今日は違う。

なんと、ついに湯浅高校の校長先生まで依頼に来て、やっと調査が決定したのだ。




校長先生が帰ったし、さぁ仕事すっか!と所長室に入ると、後ろから一緒に入って来たナルが、禍々しいオーラを発していた。

ギギギッ……と油の切れた機械のように振り向くと、案の定すごい睨みだ。
こわいこわいっ!!どんな霊現象よりも怖いわっ!!!!


『……えっと……ごめんなさい』

何がごめんなのかわからんが、とりあえず謝っといた。だって殺されそうなんだもんっ!!


「……何に謝ってるんだ?」

いつもより少し低い声で近寄って来る。


『えっえぇ………と……』

早く答えなければと、頭をフル回転させた私は、目もあっちこっち動いてて忙しい。


そんな様子にやっと落ち着いたのか、ナルはため息をついてから零すように言う。


「……そもそも、僕がイラつくのはおかしいんだが。………なんなんだろうな、この気持ちは」

床に視線を落として自分の気持ちに真剣に悩んでるナルを見ると、彼はまだ17歳の少年なんだと改めて気付かされる。


てか、あれ??その気持ちって……
はっはーんと思った私は、ナルが可愛いくて、ついつい頭を撫でてしまった。

ナルが睨んで来たけど、その瞳は熱を帯びている
双子でもこうも反応が違うのは面白い。
ジーンは頬を赤くするけど、ナルは耳を赤くする


「………名前っ」

『はいはい』

やれやれ仕方ない、やめるか。
ナルって、そんな睨むくせに手はどけないよね。

そんな可愛いナルが見れて満足な私は、さ〜て仕事仕事っ!と切り替えるように踵を返した。


しかし前に進もうとした途端、勢いよくナルに腕を引っ張られた。

バランスを崩した私は、ちょうどナルの胸に頭が凭れるように倒れてしまった。

うん、なかなか胸筋が薄くて硬いな。

何なの?と凭れたまま見上げると、意外にもナルの顔が近い。
自分の額にナルの息が当たって、思わずドキッとした。

頭から伝わるナルの少し速い鼓動を、自分の煩い鼓動が大きく塗り替えていく。

暫く見つめ合って固まってると、紅潮した私の顔に、ナルが悪戯に成功した子供のようにニヤリと笑った。

倒れる時に支えたのか、私の肩を掴むナルの手が熱い。

てかこの体勢はヤバい!そろそろ死ぬっ!と、焦った私をゆっくりと起こして、

「仕返しはこの程度にしておくか」

そう言ったナルは、くつくつと喉の奥で笑ってて満足そうだ。


こんなドッキリができるのは、ナルシストのナルにしかできないだろう……。

解放された私は、まるで我慢比べをしてたかのようにドッと疲れた。
しかしまだ自分の心臓が踊り狂ってて煩い!

もうそこの所長室の窓から心臓投げようかな!?
もう邪魔だしっ!!

はぁ〜、……とりあえず落ち着け!
と自分に言い聞かせて、

『ちょっと紅茶入れてくる!!』

と急いで所長室を逃げ出した。
しっかし、こりゃ戻りが大変だぞ……

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