ゴーストハント夢
□サイレントクリスマス
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クリスマス・イブである今日は、いつも以上にクリスマスムードで外が賑わっている。
そして、それは恐れ多くも事務所の中まで侵食していた。
『麻衣、こにゃにゃちわんこそばー』
「あっ、名前、こにゃにゃちわー!
ほら見てみて、これっ!」
名前が元気よく挨拶すると、麻衣は鼻歌を歌いながらクリスマスツリーに飾りをつけているところだった。
何ということでしょう!
笑顔の空間造形師と化した麻衣によって、殺風景な事務所が今、生まれ変わろうとしているっ!
『もうビックリだよぉ、すごく綺麗だね!
でも、やるなら教えて欲しかったかなー』
クリスマスツリーの高さは綾子くらいもあるし、一人じゃ大変だったんじゃないかなぁ??
「えへへぇ〜。皆を驚かせようと思ってさ!」
『おぉ〜イイねぇ、それ』と笑いながら、名前もクリスマスツリーに飾りをつけていく。
そこでイイ案を思いつく。
『あっ、そうだ!即席教会セットの十字架とジョンも用意しない?』
用意したらきっと教会に早変わりだよ!
「あれっ、名前ってキリスト教信者だっけ?」
『いいや、クリスマスなら教会に行けってナルに言われそうだからさ〜』
なんて話をしていると噂のナルリンの登場だ。
「………何をやっているんだ」
案の定、クリスマスツリーを見たナルは呆れたように聞く。
「だって、クリスマスなのにこの部屋、あまりにも殺風景なんだもーん」
そう言って麻衣がニコニコと返事すると、「撤去しろ」とバッサリと切り捨てるナル。
『まぁまぁ、今日くらいイイんじゃない??』
私が麻衣に便乗すると、ナルはムッと拗ねたように「撤去」ともう一度言う。
さすがに麻衣が「そんなぁぁ」とションボリした時、それを救うかのごとく、ウジャウジャとお馴染みのメンバーが事務所に入ってきた。
「あら、綺麗なクリスマスツリー、とても素敵ですわね」
「あら、クリスマスツリー?」
「いいねぇ。いっきにクリスマスの雰囲気がでるねぇ」
舞台裏で待機してたの?ってくらいのタイミングで、真砂子に続いて、綾子とぼーさんが現れ、クリスマスツリーに群がる。
「………なぜみなさん、うちの事務所に?」
機嫌の悪いナルの代わりにリンさんが無表情で聞く。
「せっかくのクリスマスイブなんだから、わいわいやりたいじゃない」
「そうそう!デートする相手もいないしなー」
拗ねたような顔のぼーさんに
『みんなと一緒の方が楽しいでしょ?』と、ぼーさんの背中をポンポン叩いて笑う。
実は、今日はぼーさんからのお誘いがあったんだけど、事務所でみんなと楽しむことにしたのだ。
それにきっとジョンの依頼があるしねっ!
そんな私たちの様子にナルは煩わしそうに溜息をついて言う。
「そんなにクリスマスを祝いたいなら、教会にでも行ってください」
その時、こりゃまたタイミングが良いのか悪いのか、事務所にジョンが入ってきた。
「………君も、わいわいやりにきたのか?」
ウンザリしたような呆れたような目線を向けて言ってくるナルに、苦笑いのジョン。
「こんな日に申し訳ないんですが、事件の依頼が入ったんです。町の教会から」
結局ジョンのこの言葉で、ナルの言った通り、私たちは教会に行くことになった。