ゴーストハント夢

□公園の怪談
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湯浅高校の一件以降、真砂子が事務所によく来るようになった。


そしてある日、応接室で麻衣たちと休憩がてら、お茶をしていた時のこと。

ナルの恋人ってどんな人なんだろって話になって真砂子が言い出したのだ。



「そもそも、あのナルの指輪はまやかしなんじゃありませんの?」



『まっま、ま、まさか〜ぁっ!!』

「さすがにいるんじゃないの??恋人」

「ハイです。渋谷さんも年頃どすし、それにそんなフェイクをする人と違うと思いますどす」



こりゃマズイと思い、一応否定してみたものの、麻衣とジョン以外はそうではないようだ。

てか麻衣とジョンを騙してるみたいでズキっとするぜ……。あいたたた。



「確かになぁ〜。ナル坊って顔はイイが、女の影を感じないんだよな」

「そうよねぇ。だって仕事ばっかで、彼女と会ってる時間なんてなさそうだし……。
実際、どうなのよ麻衣」



「うーん、言われてみれば…。ナルってほとんど所長室で篭ってるかなぁ。
あっ、でも、名前も所長室で篭ってるよ〜。



………まっ、まさか、名前が恋人っ……!?」



全員の視線が一気に突き刺さる。
特に真砂子っ!!



『うぇええ〜!?ないない!!それはないよ!』


私の否定に「なーんだ」となる中、ぼーさんは「よっしゃ!」と喜び、真砂子はまだ疑いの目を向けている。


もうヤバいって、恋人じゃないのに何でこんなに睨まれなくちゃなんないんだっ!!


その時、カチャリと所長室からナルが出て来た。


「名前、お茶」


『はい、よろこんでぇっ!!』



おぉ〜!!グッドタイミングっ!!
この場から開放されたかった私は、嬉しさのあまり急いでキッチンに逃げ込んだ。



ナルが鬱陶しそうに「また来てるんですか、随分お暇なようで」と言うと、ニヤニヤするぼーさんと綾子。


「よぉナル坊、ちょっといいか」

「何です、僕は忙しいのですが」


「もう〜つれないわね。ていうか、ナルってさぁ本当に恋人がいるの?」

身を乗り出して聞く綾子に、ニッコリ笑うナル。


「またナンパですか。早く他を当たることをオススメしますね」

サラリと言うと、ナルは所長室に戻ってった。


綾子は怒りと恥ずかしさで顔を真っ赤にさせている。


それをキッチンからこっそりと覗いていた私は、余計なことを聞かれないように紅茶を持って、速やかに所長室へと逃げ込んだのだった。





中では、休憩をするために、ナルがソファに座って本を読んでいる。


『はい、紅茶おいとくね』


ナルの紅茶をソファの前のローテーブルに置くとナルが本を置いて、怪訝そうにこっちを見た。



「なんであんなことを聞かれたんだ」


私は溜息をついてナルの隣に座る。


『ナルに恋人がいないことに気づいたのは真砂子なの』

「原さんが?………なるほどな」



あー……そこで納得するってことは、やっぱ真砂子からのアプローチがまたあったんだな??



でもあの真砂子の目は怖いな……。本気でナルのことが好きなんだ……。



『私……所長室に籠らない方がイイかも……』

「なぜ?」

『恋人なのかと怪しまれたし……』

「別に、勝手に言わせておけばいい」



そうは言うものの、真砂子に殺されそうだしー。

なにより、友達の麻衣にまで怪しまれたのは気マズイし、なんだかモヤモヤするのだよ……。



そんな、下を向いて浮かない顔の名前に、ナルがポツリと言う。



「名前は………僕の恋人だと思われて……嫌だったのか?」



えっ!?と横のナルを見ると、彼はこっちを見ていた。


その顔はいつもの無表情だけど、目は深く隠された感情が時々きらきらとひらめくようだった。



『いやいや、そんなことないよ。むしろ恐れ多いよ』


それに、多くの女性から殺される恐れも多いよ!

というのは、綺麗に微笑んだナルを見たから言わないでおいた。

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