好きだからこそ
□11.良かれと思って手放した物はあまりにも大きすぎた
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あれから二日が過ぎた。
俺はなまえのことを本当に好きなのか自分自身分からなくなっていた。
でもなまえはとても優しいが、自分の決めた事は曲げないという芯が通った女だから、俺との関係を続けながら大串くんと付き合うなんて事はしないと思うし、もし俺に愛想つかしていたとしたら別れを切り出してくるタイプだ。
でも、そういう奴だという事を知っていながら何故か俺はあの時少しでもアイツの事を信じてやれなかった。
いや、自分が傷付く事を恐れて、なまえに裏切られた事が余りにも悲し過ぎて良く考えもせずにあの女を抱いてしまった。
結局、裏切ったのは俺の方だった。
今、俺はあの女の家を出て近くの広場まで来ていた。
今の状態の俺があの女に会ってしまえば、有る事無い事ぶち撒いてしまいそうだったからだ。
いきなり騒がしくなった広場の入口に視線を向けるとそこには一台のパトカーが停まっていて、そこから鬼の形相で俺に近付いてくる一人の男。
男は俺の前に来たかと思うと胸倉を掴み上げ、その怒りの色を浮かべた、開き切った瞳孔を俺に向ける。
「テメェは此処で何してやがる!!」
「オイオイ、それでも警察ですか?瞳孔開いてんぞコノヤロー」
何でこの男、真選組副長である土方十四郎はこんなに怒っているのか分からない。コイツに何かをした覚えもない。
よく見ると土方の胸倉を掴む拳が震えている事に気が付く。
「テメェ⋯⋯なまえに何しやがった!!!」
不意に土方の口からなまえの名前が出た。
なまえ⋯⋯?
何でこのタイミングでなまえの名前が出て来るんだ?
奴の後ろからバタバタと走って来るのは新八と神楽と定春。
なまえは何処だ⋯⋯?
何でなまえが居ないんだ?
「⋯⋯オイ、なまえは⋯⋯?」
その言葉が口をついて出た瞬間、俺の顔面に土方の拳がめり込む。
頭の中に鈍い音が響き、そのまま俺は2メートルほど吹っ飛んで地面に倒れ込む。終いには鼻のあたりに鋭い痛みが走り、鼻血が出て来た。めちゃくちゃ痛ェ。