好きだからこそ

□9.過去
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※ほぼ会話文


俺はあの女、美琴の家に招かれている。


何だかんだでここに招かれて今は三日目の朝。


俺はこの女の性格の悪さ、いや。なまえに対する理不尽な嫉妬を知って、今も腸が煮えくり返りそうだった。


それは一日目。


そう、あの依頼の始まりの日の夜のことだった。



「よく決断してくれたわね。⋯⋯まぁ、あの子のことを想ってのことでしょうけど」



女はだだっ広い客間の真ん中にあるこれまた長いテーブルに食事を並べ、白ワインの香りを楽しみながら口に含んでいた。



あたりめーだ。なまえを危険な目に合わせるわけにはいかねェよ。



「そんなのいーから早く話せ。アイツとお前の関係を」



「せっかちな男は嫌われるわよ?見た目はイイ男なのに勿体ないわ」



「いいから話せっつってんだよ。聞いてんのか?あ?」



「分かったわよ」



渋々と語り出した彼女のなまえに対する怒りは、あまりにも理不尽で酷いものだった。



なまえと女はかつて同じスーパーでアルバイトをしていたことがあるらしい。



そして、ある日なまえは途中で入って来た男(ここでは少年Aということにしておこう)に恋をしたらしい。


何気に人気があったなまえを女はよく思っていなかったが少年Aが好きだった女はそいつのことを半ば諦めていたらしい。



だが、その日は突然訪れた。


みんなでなまえに告白して誰がOKを貰えるか賭けることになった。



少年Aは半ば無理矢理参加させられて、想いを伝えるいいチャンスだと唆されて告白をした。



だが、その告白の翌日。


なまえはその全員の告白を断った。



何故ならなまえはその賭けがあったことを知ってしまったから。



賭けのことを唆したのも、女。


なまえに賭けの存在を教えたのも、女。



つまり全ての流れはこの女、美琴が作り上げたなまえを罠に嵌めるための自作自演だったということ。



「テメェ、何でそんなこと⋯⋯」



「だって、あの子が幸せになるの許せないんだもの。私から彼を奪っておいて、好きなのに振るなんて許せない。だから、あの子の大切なもの⋯⋯。あなたを奪って、あの子にも同じ苦痛を味わせてやるの」



唇を今日の昼のように弧を描くように歪ませ、恍惚とした表情を作る女。



なんて理不尽なんだ⋯⋯。



というか自分でけしかけておいてよくもいけしゃあしゃあと⋯⋯!


俺は女にバレないようにテーブルクロスの下に隠れた拳を血管が切れちまうんじゃないか、という程に握り締めた。



これがあの日に起きた出来事。




ただ自分に割り当てられた部屋のベッドで、あの日のことを思い出してまた腹が立っていると、



「銀時。入るわ」



女がお構い無しに部屋に入って来る。



「今日はお買い物に行きましょうよ」




俺は二つ返事で了承した。



まさかあんな光景を。



胸の奥の大事なところを握り潰されるような光景を目の当たりにするとも知らずに。





to be continued...




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