好きだからこそ
□7.裏切り
1ページ/1ページ
「坂田さん、来てくれたんですね!」
「そりゃあ、依頼ですからね」
目の前にはなまえと出逢う前だったら絶対に惚れていたであろう、別嬪さん。名前なんて言ったっけ⋯⋯?
早く帰ってなまえとイチャコラしてェ。
何かさっきから嫌な予感しかしねェ。
「ところで坂田さん⋯⋯。
お気付きなのではないですか?」
「あァ?」
「浮気調査の依頼なんて嘘だってことに」
やっぱりそうかよ。
「まァ、こんないいオンナ放っとくダンナはまず居ねェだろうわな」
てかコイツ何が目的なんだ?
「交換条件、飲んでいただけません?」
「はァ?交換条件だァ?」
いよいよ面倒臭いことになってきてんぞ、オイ。
「俺ァ、浮気調査の仕事に来たんだよ。関係ねェんなら帰るぞ」
こんなのやってられっか。
と思って踵を返した時だった。
「あなたの恋人⋯⋯。みょうじなまえさんでしたっけ?」
なまえのフルネームがこの女から出てきて、思わず立ち止まる。
「⋯⋯テメェ、何でなまえのフルネーム⋯⋯」
「あの子は忘れてるみたいだけどあの子とは一応知り合いなのよ。
交換条件なんだけどね、あなた私と浮気をしなさい」
「はァ!?」
女が言ったことが信じられなくて、俺は大声を出しちまった。
「もし飲んでくれなかったら⋯⋯あの子、どうなるでしょうね?」
ニタリ、という表現が合うほどに弧を描くように唇を歪ませる女。
こいつ、本気でヤベェ!
俺の勘が正しければこいつの目的は最初っからなまえだけだ。
でも何で⋯⋯。
「テメェ、何でなまえを目の敵にしてやがる⋯⋯」
「交換条件を飲む代わりに教えてあげるわ」
俺ァ、最低なヤローだ。
「⋯⋯分かった。交換条件飲んでやる。⋯⋯だがななまえを傷付けるようなことをしてみろ⋯⋯。その喉噛み切ってやらァ⋯⋯」
女はまたニタリと笑って、「よろしくね。銀時?」と俺の手を握って来る。
お前が俺の名前を呼ぶんじゃねェ。
俺の手に触るんじゃねェ。
虫唾が走る⋯⋯。
なまえ⋯⋯。
こんな彼氏ですまねェ⋯⋯。
本気で愛してる⋯⋯。
俺はもう口にしてならない言葉たちを飲み込んだ。
to be continued...