好きだからこそ
□6.絡まって絡まって拗れて、切れた。
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土方さんに送ってもらって、心配する彼を何とか言いくるめて私はお風呂に入っていた。
郵便受けには銀さんからの手紙が入っていて、まだ依頼はなかなか終わらないらしい。
口だけでは何とでも言えるものね⋯⋯。
あなたの好き、が分からない。
簡単にヤらせてくれるから好き?
簡単に騙せて付き合いやすいから好き?
でも、もう私たちの絆という糸が断ち切られたのは感じた。
銀さんは美琴さんが好き。
好きな対象が私から彼女に変わっただけ。
たったそれだけのこと。
なのに何でこんなに涙が出てくるんだろう。
実は銀さんと付き合う前までは、好きという言葉は信じられない人間だった。
昔もそうだった。
かつて、私は大手のスーパーでアルバイトをしていたことがある。
そこで初恋というものをした。
その人に好きだよ、って言われて幸せだった。
なのに、彼は私がOKするか否かで賭け事をしていたことを知ってしまった。
好きという言葉は、信じられない。
私は決意した。
赤ちゃんを産むことは諦めたくない。
それならば一人で産んで育てればいい。
幸いにもお金は仕事人間だった私にとっては預金は出産費用を出しても、十年ぐらいは困らないくらいにはたくさんある。
「⋯⋯よし。決めたら即行動!」
湯船から勢いよく立ち上がった私は頬を両手でパン!と叩くと行動を開始した。
明後日からでも住める賃貸を江戸からすごく遠いところで探し、すぐに契約をした。
私の荷物は宅急便で日時指定して取りに来てもらった。
神楽ちゃんのご飯を早急に作る。
「⋯⋯姉御?」
やるべき事をすべて終えて、て手紙を置いて出るかと思った時、神楽ちゃんが帰ってきてしまった。
「姉御、何で⋯⋯姉御の荷物ないアルか?」
しまった。見られちゃったか。
「姉御!答えてヨ!」
「⋯⋯ごめんね、神楽ちゃん。
私、もう疲れちゃった⋯⋯」
そう言うと、神楽ちゃんは目を見開いて涙を流した。
そして彼女は私を止めなかった。
バイバイ、銀さん。
もう会うことはないだろうけれど、本気で愛していたよ。
to be continued...