好きだからこそ
□3.依頼
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「じゃあしばらく家空けるから、戸締りとガス栓は気を付けろよ?」
「分かったから!子供じゃあるまいし」
「なまえは銀さんからしたら可愛い可愛い子供なんですぅー」
私は銀さんの彼女なのにと思って頬を膨らませていると、銀さんは「ぶははははは!」と笑う。
怪訝そうに彼を見る。と彼は口に手を当てて笑っていた。殴られたいのかな?
そして銀さんは開けたはずの玄関の戸を閉めて、私の肩を押して壁に押し付ける。
すると、襲ってきたのは顎に手を添えて柔らかな、だけどどこか情熱的な口付け。
唇が離れると息を乱しているのは私だけ。ちょっとだけ悔しい。
「だいじょーぶだって。ちゃーんと、銀さんなまえのこと大人の女として、彼女として見てるからさ?⋯⋯な?」
と言って瞼にそっとキスを落とされて、頭はぐしゃぐしゃと撫でられる。
もうズルい。色々とズルい。
この人は私の考えていることも分かっていてああいう事を言う。
たぶん子供が欲しいと思っていたことも分かっているんだろう。
子供が、新しいいのちが私のお腹にいることは知らないと思う。そういう重要なことに対してはめっぽう弱い人だから。
「うん⋯⋯分かってる」
銀さんは満足したように微笑む。
「⋯⋯まだ少し時間あるから、なまえで充電させて⋯⋯」
「⋯⋯え?」
「なまえ⋯⋯好きだ⋯⋯」
銀さんと私は時間ギリギリになるまでずっとキスをしていた。
まさかあんなことになるなんてまだ私も、たぶん銀さんも思っていなかった。
依頼主は私より5個ぐらい上の綺麗なお姉さんだった。
名前は美琴さんと言うらしい。
旦那さんが浮気をしているかもしれないから、その調査をしてほしいと言うもの。
でも、美琴さんどこかで見たことがあるんだよな⋯⋯。まぁいいか。他人の空似かもしれないし⋯⋯。
とりあえずここから遠いから泊まりがけということになったらしい。
⋯⋯不安を感じないと言ったら嘘になる。
けど、さっき銀さんがちゃんと好きって言ってくれたから⋯⋯。
ねえ、銀さん。
大丈夫だよね⋯⋯?
to be continued...