短編

□June Bride
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「はい、誓います。」


隣にいる薫ちゃんは涙で声を震わせながら神父の繰り返す。



街で絡まれているのを助けたことが出逢いのきっかけだった。
どうしてもお礼がしたいという薫ちゃんとアルプスでお茶をして他愛のない会話をしている内に彼女とこのままさようならしてしまうことが惜しくなって連絡先を交換した。


何度か会ってデートを重ねる内に好きだという想いに気が付いて告白すると


「実は私も……秋山さんの事が…」


頬を赤らめて嬉しそうに言うものだから人目を気にせずその場で抱きしめた。


初めて会った時から綺麗な薫ちゃんは化粧品会社に務めている。

落ち着いた雰囲気で、可愛い笑顔を見せてくれて、優しくて……挙げたらキリがないくらい程いいところがある彼女を想う気持ちは日に日に深くなって交際半年の記念日に夜景の綺麗なレストランに連れて行った。



「うわあ……凄く綺麗です、お料理も美味しいし……秋山さん、ありがとう。」

「喜んでくれてよかった。ここからの景色は凄く綺麗で気に入っているんだ。まるで宝石を散りばめたように美しい景色が広がっているだろう?……君のようにね。」


少し気障なセリフにも照れた顔で笑う表情は何よりも美しくて可愛い世界一のもの……。
良い歳したオジサンなのにすっかり入れ込んでいて…運命の人に違いないと確信している。



椅子から腰を上げ、彼女の隣に移動して片膝をつくとスーツの内ポケットから今日のデート前にル・マルシェに立ち寄って購入した指輪の入った小さな箱を目の前に差し出す。


「どんな綺麗な景色よりも美しくて可愛い君とこの先一生一緒にいたいと思うんだ。俺と、結婚してほしい。」


交際期間半年でプロポーズをするなんて早いんじゃないか?自分でもそう思ったけど彼女を想う気持ちを止められなかった。

突然のプロポーズに暫く固まってた薫ちゃんは声を震わせて


「はい。」


そう一言短く返した涙ぐんだ表情がまた愛おしくてあの日と同じ様に抱きしめた。



「駿さん、こんな私を選んでくれてありがとう。」


白いウエディングドレスに身を包んだ彼女は世界で一番の俺だけの宝物。

この先何があっても守っていこうと改めて決意して誓いのキスを交わした。




June Bride!



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