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□初恋
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夏休み中、ニュース番組で近所で強姦事件があったと報道され、母や姉は怖いねぇ、気をつけようねぇ、等と言っていた。
俺は、他人事だと思っていた。
もし、もしあの時、被害者が彼女だと知っていれば、死ななくて済んだのだろうか。
否、例え知っていても俺には何も出来なかった。
総てを知っていても、何も出来なかった。
そんな無力な己を恥じた。そして、彼女が犯され、苦しみ死んだ事実を受け入れた。
受け入れ、犯人をこの手で殺してやろうと町を駆けた。
毎日、毎日、それらしい人物を探した。
だが、結局犯人は自首し、懲役八年の刑に処された。
たった八年。
たった八年で、彼女への罪が消えてしまう。
そんな事、許してなるものか。
俺は、待った。
そいつが刑務所から出て来た瞬間に刺殺してやろうと思っていた。
しかし、犯人は獄中死をした。警官の目を掻い潜り首を吊って死んだ。
やり場の無い怒りだけが心に残った。
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