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□夏が始まる前の事
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「彼岸花、触ったら手、腐っちゃうよ。」
それが、彼女と初めての会話だった。

『夏が始まる前の事』タハラダの事

何時もの様に、畑しか無い平凡な畦道を、今日一日の反省をしながら歩く。
ゆるら、ゆるらと夕陽が雑草を、道を、己を染めていく。
そんな中ふ、と雑草の中に、一際目立つ陰を作っていた花が目に止まる。
それは、まるで逆さ花火の様に花弁を開き、夕陽を花弁の隙間から地へ零している様に見えた。
季節外れの彼岸花。
秋に咲く花がこんな夏の初めにも咲くのか、と一人感心しその花に手を伸ばした時、背後から囁く猫の様な声がした。
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