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□金魚の噺
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それは、金魚の様だと思った。
夏祭りなのだろうか。帰宅する途中、幾度も浴衣姿の子供やはしゃぐカップルを見かけた。
その中に、一人だけ派手では無いが目に止まる少女が居た。
おさげを可愛らしくリボンで飾った少女は、淡い水色の中に所々溶け消えてしまいそうな程の赤が入った浴衣とは対照的に、暗闇でもパッと輝きそうな程のオレンジの帯をしていた。
その帯が、金魚の尾鰭の様だと思った。ヒラヒラと揺れる柔らかい帯は、掬われると云う事を知ってか知らずか、尾鰭を揺らめかせポイから逃げる金魚を連想させた。
そんな趣味は無いが、誘われる様に俺は金魚の尾鰭を追いかけていた。
『金魚の噺』新米刑事アキエダの事