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□參番ホームローディング
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人は死ぬ時に何を思うか。それは人それぞれだ、と言ってしまえばそれまでだが、私は毎回同じ事を思う。

『参番ホームローディング』

私は、何度も死を繰り返している。総ては一人で死ぬのを恐れる彼女の為だ。私は駅で彼女を待ち、彼女と共に死場を探し、そして二人で死ぬ。それを、もう何十回と繰り返している。何度繰り返していても死には変わりなく、苦しみも痛みも総て我が身を貫き死へ誘う。だが、厭では無い。マゾヒストと云う訳では無いが、私はこの死を楽しんでいる。私が死ぬ、つまり彼女も死ぬのだ。私は彼女が死ぬ間際に見せる儚げな表情が好きだった。死を受け入れ閉じる瞳が、何か言いたげに小さく開かれる唇が、薄桃色から陶器の様な白に移り変わる頬が好きだった。彼女の為と言いつつも、死ぬ理由はその顔を見る為にすり替わっていた。人は死ぬ時に何を思うか。それは人それぞれだ、と言ってしまえばそれまでだが、私は毎回同じ事を思う。次はどうやって殺そうか。このループの原理は解らない。だが、私が満足したら終わる気がする。このループを生み出したのは、死にたかった彼女では無く、彼女の死ぬ間際の顔を求めた私が生み出した。それならば、彼女に悪い事をしてしまった。きっと、何百回、何千回と繰り返しても私は満足出来ないだろう。小さく愛しい君よ。私の為に、死んでおくれ。

いつもの駅で彼女が降りてくる。彼女にはこれから起こる事の記憶が無い。不安で満ちた顔をしている。私は彼女と目を合わせ何時もの台詞を吐く。

「偶然だね。」

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