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□噺
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夜、これもまた蒸し暑く、ワイシャツが肌にくっつく。俺は、女を担ぎ足早に川辺へと向かった。死体とは、斯様に重い物なのか。筋肉質な俺とは云え、女一人担いで走るのにはかなりの体力が居る。昨夜の事も有り、腰が痛い。辺りを見回し、人が居ないか確認してから女を川へ入れた。片方の靴を拝借し、酒瓶と共に近くの茂みへと置いていった。
そして、来た時と同じく足早に部屋へ帰った。下駄の音が心臓の音の様に感じた。
女の死体を遺棄した後から、焦りや罪悪感がやってきた。

それから、数週間後、娼婦が俺の部屋に居た。まるで、西洋のお人形さんの様な出で立ちの女だ。仕事帰りに街を歩いていたら声を掛けられた。自分を買ってくれと、申し込まれたが殺した女を思い出し軽く遇った。だが、この女は勝手に家まで付いて来たのだ。何もせずに返すつもりだったが、脳は溶けたままだったらしい。この女の死に顔は美しいのか、知りたくて仕様が無い気持ちになった。女の肌は白く、艶かしく、以前の女とは比べ物に成らない。その上、上品さまでも兼ね備えていた。何故、娼婦等しているのか不思議で仕方が無い。人形の様な女は、自ら俺のペニスをしゃぶり始めた。慣れている。それだけ、男と寝たのだろう。容姿に似合わず淫らな女なのだ。しゃぶりながら、指で己の膣を解していた。まるで、淫魔に取り憑かれている様に低俗で淫乱な絵面だ。コイツは自ら望んで堕ちたのか。それじゃあ、きっと死に顔は醜い。女は自ら俺に跨り、上下に動く。跳ねる度に揺れる乳房、淫行を楽しむ表情、ずるずると互いを繋ぐ物は卑猥な音を立て滑る。厭らしい女だ。果てる前に、女を下にする。そして首に手を掛け、腰を振った。女はキャンキャンと子猫の様な声で感じ入っている。腰の動きが早く成るにつれ手に力が篭っていく。子猫の声は聴こえなく成り、皮膚と皮膚がぶつかる音だけが響く。総て吐き出し、女の顔を見る。美しかった。顔は次第に青白くなる。瞳は閉じ、長い睫毛が影を作る。微かに眉間に皺を寄せた、美しい苦悶の表情だった。擦れた口紅すら美しく感じる。淫靡に取り憑かれた女は、美しかった。あの醜い女と何処が違ったのだろうか。俺は、美しい女の死に顔を見て一度、抜いた。そうして、違いについて考えながら女を前回と同じ様に川へ流した。

そこで、俺は目を覚ます。
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